防煙垂れ壁とは?防煙壁・防煙区画の設置根拠と排煙免除
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防煙垂れ壁は、煙をせき止める「防煙壁」の納まりを指す現場用語です。
令126条の2は防煙壁の定義と排煙設備の設置対象を、令126条の3は排煙設備の区画・排煙口・開放装置を定めています。50cm、500㎡、30m、1/50は、互いに別の要件です。
2025年の改正では、準耐火構造の防煙壁、排煙口を設けられる壁の範囲、告示1436号の免除類型が改められました。特定の条件を確認して適用します。
防煙垂れ壁と防煙壁の法令上の位置づけ
建築基準法令で主に使われる語は「防煙壁」です。「防煙垂れ壁」は、その一種である垂れ壁を指す現場用語として使われます。煙を一定の範囲に留める防煙区画と、延焼を防ぐ防火区画は、役割と根拠条文が異なります。防火区画の貫通処理と混同せず、図面上でも区画の種類を確かめます。
排煙設備の設置対象は令126条の2から確認する
令126条の2第1項には、用途と延べ面積、階数、無窓居室、居室の床面積を組み合わせた設置対象が定められています。たとえば法別表第一(い)欄の一部用途に供する特殊建築物で延べ面積が基準を超える建築物、3階以上かつ延べ面積が基準を超える建築物、令116条の2第1項第二号に該当する開口部のない居室、延べ面積が大きく床面積が基準を超える居室が対象に含まれます。条文にはただし書きと「別の建築物とみなす」条件もあるため、用途・規模だけで設置要否を決めないでください。居室の定義と無窓居室の判定も参照できます。
同項には、高さ31m以下の部分にある居室を100㎡以内ごとに防煙壁で区画した場合など、特定の設置対象から外れる条件もあります。どの区分にかかる条件かを条文の括弧書きで確認し、建物全体に使える免除とは扱わないでください。
防煙壁の定義と50cmの意味
令126条の2は、間仕切壁、天井面から下方へ50cm以上突出する垂れ壁、はりなど煙の流動を妨げる同等の効力があるものを防煙壁の形として挙げています。通常の防煙壁は不燃材料で造るか、これで覆います。50cmは「垂れ壁を防煙壁とする方式」の寸法であり、どの方式・製品にも一律に当てはまる数値ではありません。
2025年改正では、一定の条件に該当する31m以下の部分の居室で、防煙壁の一部を準耐火構造とする扱いが設けられました。対象は居室などに限られ、告示994号が定める下端高さも満たす必要があります。すべての垂れ壁を準耐火構造に置き換えられるわけではありません。
防煙壁が煙を抑える範囲
防煙壁は煙が別の防煙区画部分へ流れるのを抑えるためのものです。垂れ壁だけで煙を屋外へ排出する設備ではありません。防煙壁の位置、排煙口、天井・床の高さを合わせて計画します。50cmが避難時間を何分延ばすかなど、出典のない性能値は一般化できません。
防煙区画と排煙設備の数値基準
令126条の3第1項は、排煙設備を設ける場合の構造を定めています。代表的な数値は、対象と測り方を分けて確認します。
| 数値 | 条文上の対象 |
|---|---|
| 500㎡以内 | 排煙設備の防煙区画を区切る床面積 |
| 水平距離30m以下 | 防煙区画部分の各部分から排煙口までの距離 |
| 床面積の1/50以上 | 排煙口が直接外気に接する場合に、排煙機を省略できる条件の一つ |
30mは歩行距離ではなく排煙口までの水平距離
令126条の3第1項第三号は、防煙区画部分の各部分から排煙口の一つまでの水平距離を30m以下とします。避難経路を歩く長さではありません。排煙口を設けられる壁の部分は、天井高に応じて告示995号で定められています。高さが変わる室では、床面・天井面と防煙壁の下端も一緒に確認します。
1/50は二室を一つの区画にする条件ではない
令126条の3第1項第八号の1/50は、排煙口の開口面積が防煙区画部分の床面積の1/50以上で、排煙口が直接外気に接するときに、排煙機を設けなくてよい条件です。二室を一つの防煙区画として扱うための一般的な開放面積基準ではありません。無窓居室の判定に出てくる1/50とも、目的と根拠条文が違います。排煙計算は自然排煙の要件、窓の判定は無窓居室の規定で切り分けます。
固定式・可動式は製品の納まりとして選ぶ
固定式・可動式という呼び分けは、製品の納まりや作動方法を表すものです。令126条の3が挙げるのは排煙設備の排煙口・手動開放装置・自動開放装置等の条件であり、垂れ壁を二つの法定方式に分類しているわけではありません。可動式を使う場合は、防煙壁としての材料・形状、感知器との連動、電源、作動・復旧方法を製品仕様と設計図書で確認します。
排煙免除の告示と2025年改正
告示1436号は各号の条件を確認する
告示1436号は、令126条の2第1項第五号を受け、火災時に煙やガスが避難上支障のある高さまで降下しない部分を定めています。適用類型ごとに用途、建物・室の規模、区画、内装、警報設備、避難経路などの条件があります。「100㎡以下なら免除」「不燃戸を付ければ30cmにできる」といった一律の置き換えでは判断できません。
令和7年告示998号(2025年11月施行)は告示1436号を改正し、旧第三号の特別な排煙設備に関する類型を削除、旧第四号の類型を第三号へ移しました。旧版の号番号を現行番号として使わず、該当する号・細目の本文を照合します。
告示994号の下端高さと告示995号の排煙口位置
準耐火構造である防煙壁の下端から床面までの垂直距離は、告示994号が居室または防煙区画部分の面積に応じて定めています。同告示第二は、防煙区画部分が二以上の居室にわたる場合、第一の距離計算に限ってそれらの居室を一室とみなす特則です。二室を同じ防煙区画にまとめる一般的な面積比の規定ではありません。
- 340㎡以下:3.0m
- 340㎡超〜380㎡以下:3.5m
- 380㎡超〜420㎡以下:4.0m
- 420㎡超〜460㎡以下:4.5m
- 460㎡超:5.0m
この告示の距離以下に当たる床面側の部分は、従来どおり不燃材料で造るか覆う必要があります。準耐火構造とできる範囲は居室に限られると、国土交通省の技術的助言が説明しています。
告示995号は、排煙口を設けられる壁の範囲を定めます。床から天井までが2.6m以下なら天井から下方80cm以内(ただし最も短い防煙壁の高さが80cm未満ならその高さ以内)、2.6mを超えるなら床から1.8m以上(防煙壁の下端が1.8mより高ければその下端以上)です。これは排煙口位置の条件で、可動式垂れ壁の通行クリアランスではありません。
材料・操作部・維持管理で確認すること
不燃材料と製品の適合性
防煙壁の材料は、令126条の2が求める不燃材料への適合を、材料名だけで判断しません。ガラス、金属、ボード、不燃シートなどを使う場合は、製品や組合せがどの認定・仕様に該当するかを設計図書と製品資料で確認します。令126条の3には、防煙壁を重量で分ける一般基準はありません。製品の重量条件を、引用する条文・認定と対応づけずに法定要件として断定しないでください。
手動開放装置の位置は垂れ壁下端の高さと別
令126条の3第1項第五号が定めるのは、排煙口の手動開放装置の操作部分の高さです。壁に設ける場合は床面から80cm以上1.5m以下、天井から吊り下げる場合は床面からおおむね1.8mです。この1.8mを、可動式垂れ壁が降下したときの下端高さや通行クリアランスに読み替えることはできません。
煙感知器連動・施工後の確認
垂れ壁が煙感知器連動で動く製品を採用する場合は、検知信号、降下範囲、設備との干渉、復旧操作などを製品仕様と設計図書に沿って確認します。可動範囲に什器や建具が入らないよう納まりを調整し、手動開放装置や点検箇所へアクセスできる状態を保ちます。個別の製品資料で定める保守方法と、建物に適用される点検制度を分けて確認し、全製品共通の点検周期があるかのようには記載しません。
梁・天井・建具・設備の取り合いを調整する
防煙壁の位置と排煙口、空調ダクト、照明、建具の開閉範囲を、意匠・設備・躯体図で合わせて確認します。防煙壁や区画を現場で変更する場合は、排煙口までの水平距離や貫通部の処理にも影響します。設計変更を行う前に、設備・防火・避難の計画との整合を設計者へ確認します。
よくある質問
防煙垂れ壁は必ず50cm必要ですか?
50cmは、天井面から50cm以上下方に突出する垂れ壁を防煙壁とする場合の寸法です。間仕切壁や、煙の流動を妨げる同等の効力がある梁なども条文にあります。特定の高さ・用途・面積では、2025年から準耐火構造の防煙壁に関する条件も加わりました。計画に該当する方式と告示を確認します。
30cmまで短縮できる一般的な緩和はありますか?
令126条の2・126条の3、告示1436号、994号、995号を照合した範囲で、垂れ壁を一律に30cmまで短縮できる一般規定は確認できませんでした。告示1436号の免除や告示994号の準耐火構造の扱いは、それぞれ用途・規模・区画など該当する条件ごとに判断します。
1/50は二室を一つの防煙区画にできる条件ですか?
いいえ。令126条の3第1項第八号では、排煙口が防煙区画部分の床面積の1/50以上の開口面積を持ち、直接外気に接する場合に排煙機を省略できます。二室の区画を一体にするための面積比として定めたものではありません。
まとめ
令126条の2は排煙設備の設置対象と防煙壁、令126条の3は防煙区画・排煙口・操作部の構造を定めています。50cmは防煙壁の一方式、500㎡は区画面積、30mは排煙口までの水平距離、1/50は排煙機を省略できる場合の開口面積です。
排煙免除は告示1436号の該当類型の全要件で判断し、2025年告示998号による項番号変更にも注意します。防煙壁と排煙口の位置は告示994号・995号の条件も確認し、製品仕様と図面に反映してください。
同じ現場で隣に確認する項目
- 防火区画と配管貫通部:防煙区画と別の目的・根拠を確認。
- 自然排煙の設置要否・有効開口面積:排煙口・排煙機の基準を確認。
- 居室の定義:令126条の2の対象を確認。
- 無窓居室の規定別判定:令116条の2該当性を確認。
出典
- 建築基準法第2条第9号(不燃材料):e-Gov法令検索
- 建築基準法施行令第126条の2・第126条の3:e-Gov法令検索
- 平成12年建設省告示第1436号の効力・改正履歴:国立国会図書館・日本法令索引
- 令和7年国土交通省告示第998号(告示1436号等の一部改正):国土交通省の新旧対照表
- 令和7年国土交通省告示第994号:準耐火構造の防煙壁の下端距離/第995号:排煙口を設けられる壁の部分
- 国土交通省「令和7年国土交通省告示等の運用上の留意事項」:公式PDF
確認日:2026年10月。告示1436号には複数の適用類型があります。対象用途・規模・区画・設備を確認し、個別計画に該当する号・細目へ当てはめてください。