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排水管のサイズ・管径の決め方|法令・DFU・勾配を分けて整理

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結論 — 排水管の管径は「法令の性能要件」だけでは決まらない

排水管のサイズは、次の順で決めます。

  1. 法令上の要求を確認する。現行の建築基準法施行令第129条の2の4第3項は、排水量・水質に応じた容量、傾斜、材質と、トラップ・通気などの衛生措置を求めています。
  2. 計算方法を選ぶ。国土交通省の官庁施設向け「建築設備設計基準 令和6年版」は、排水横枝管・立て管を排水負荷単位で、横主管・屋外排水管を排水負荷単位と勾配で選ぶとしています。
  3. 現行の設計表に当てる。SHASE-S 206、発注者の設計基準、自治体の排水設備基準は適用範囲と数値が違うため、どの表を使ったかを計算書に残します。
  4. 器具・通気・掃除口・接続先まで確認する。呼び径だけ合っていても、立て管のブランチ間隔、トラップ口径、地域の下水道基準を落とせば設計は閉じません。

「屋内は75mm、屋外は100mm」「大便器は6dfu」といった一行の数字だけでは決まりません。管の区間、器具の使われ方、建物用途、勾配、階数、自治体基準を分けて読む必要があります。

排水管の管径選定では、法令、学会規準、公共建築の設計基準、自治体の排水設備基準が同じ表のように引用されがちです。しかし、法令が定めるのは安全・衛生上の性能要件で、具体的な許容負荷表は設計規準や地域基準の側にあります。

この記事では、どの数値がどの層の根拠なのかを分けたうえで、排水横枝管・立て管・横主管の管径を決める手順を整理します。

法令が定めることと、設計表が定めることを分ける

2026年8月時点の現行条文では、給水・排水その他の配管設備は建築基準法施行令第129条の2の4に置かれています。旧資料には第129条の2の5と記載されたものがあります。一方、昭和50年の告示制定文は当時の第129条の2を根拠としています。現行の第129条の2の5は換気設備です。古い条番号をそのまま現在の根拠として使わないでください。

同条第3項が排水配管に求めているのは、主に次の5点です。

  • 排出する雨水・汚水の量と水質に応じた容量、傾斜、材質
  • 排水トラップ、通気管などの衛生上必要な措置
  • 公共下水道等への排水上有効な接続
  • 汚水に接する部分を不浸透質の耐水材料で造ること
  • 国土交通大臣が定める構造方法による安全・衛生の確保

ここに「排水横枝管は30mm以上」「大便器は75mm以上」「屋外排水管は100mm以上」という全国一律の管径表はありません。

同条を受けた昭和50年建設省告示第1597号も、排水管については掃除口等による保守点検性、機器排水の間接排水、雨水立て管の接続禁止などを定めています。数値として明記されている代表例は、排水トラップの封水深50mm以上100mm以下です。通気管はトラップが破封しないよう有効に設けることを求めますが、告示本文に「一般部30mm、排水槽50mm」という一律の通気管径はありません。

根拠の層決めていること管径選定での使い方
建築基準法施行令・告示容量・傾斜・材質、トラップ、通気、保守点検性などの性能要件法令上の必須条件を外していないか確認
国土交通省 建築設備設計基準横枝管・立て管は排水負荷単位、横主管・屋外管は負荷単位と勾配で選ぶという方法官庁施設での標準的な設計手順として使う
SHASE-S 206器具排水負荷単位、許容負荷表、定常流量法、通気管径等の技術規準採用版と物件条件を明記して計算
自治体の排水設備基準公共ますまでの屋内外配管、勾配、流速、ます・掃除口等の地域基準接続先の下水道管理者が定める値を優先確認
JIS・製造者資料管・継手の寸法、材質、性能、使用条件呼び径と実内径、管種、継手の適合を確認

排水管サイズを決める4段階

1. 計算する区間を横枝管・立て管・横主管に分ける

最初に、計算対象がどの区間かを確定します。横枝管、立て管、横主管では参照する欄が異なります。とくに立て管は、階数やブランチ間隔、1階分の負荷と立て管全体の負荷を分けて判定するため、単一の「75mmなら○dfu」という表現では不足します。

  • 排水横枝管: 各器具から立て管等へ接続する横引き区間
  • 排水立て管: 上下階の排水を集める縦管。階数・ブランチ間隔・各階負荷を見る
  • 排水横主管: 立て管等を集める横引き主管。負荷単位に加えて勾配を見る
  • 屋外排水管: 自治体の条例・排水設備技術基準と公共ますへの接続条件を確認する

2. 器具の種類・用途ごとに排水負荷単位を拾う

器具排水負荷単位(dfu)は、洗面器の最大時排水量を基準に、器具の排水量、使用頻度、使用者の種類などを相対化した値です。器具名だけでなく、洗浄方式と建物用途を確認して拾います。

福岡市下水道排水設備技術基準(令和6年9月1日一部改正)では、例として次の値が示されています。

器具トラップ最小口径の例器具排水負荷単位の例
大便器・洗浄タンク式75mm4
大便器・洗浄弁式75mm8
洗面器30mm1
住宅用調理流し40mm2
住宅用浴槽30mm2
福岡市下水道排水設備技術基準(令和6年9月1日一部改正)附表2の例。全国一律の法定値ではなく、実施設計では適用する規準・自治体基準を確認する。

旧記事は「洗浄弁式大便器=6」と固定していましたが、これは条件を落としています。空気調和・衛生工学会の2019年調査では、SHASEの大便器の排水負荷単位は建物用途に応じて4・6・8を使い分ける構成が示されています。節水器具の排水特性も変わっているため、器具名だけで古い表を当てず、採用器具と使用頻度を確認してください。

3. 区間ごとの許容負荷表へ当てる

集計したdfuを、計算区間に対応する許容負荷表へ当てます。ここで横枝管の欄を横主管へ流用すると、同じ呼び径でも許容値を取り違えます。

福岡市基準の例では、次のように横枝管と勾配1/100の横主管で値が異なります。

管径排水横枝管排水横主管・勾配1/100
50mm6dfu適用値なし
65mm12dfu適用値なし
75mm20dfu20dfu(大便器2個以内)
100mm160dfu180dfu
125mm360dfu390dfu
150mm620dfu700dfu
福岡市下水道排水設備技術基準(令和6年9月1日一部改正)附表1の例。実際の適用は当該自治体・物件で採用する最新基準による。

旧記事は、勾配1/100の横主管を100mm=216dfu、125mm=480dfu、150mm=840dfuとしていました。しかし、この例で216・480・840が対応するのは1/50側で、1/100側では180・390・700です。また同じ記事の別の表では100mm=160dfuと書いていましたが、これは横枝管の欄です。勾配と区間名を落とすと、数値だけ合っていても設計条件が変わります。

4. 計算値をそのまま採用せず、器具・接続・保守条件で照合する

計算上の最小径が出た後も、次を照合します。

  • 接続する最大トラップ口径以上か
  • 大便器の個数、洗浄方式、節水器具の排水特性を反映したか
  • 立て管の階数・ブランチ間隔・各階負荷を分けたか
  • 合流部で上流側より縮径していないか
  • 公共ます・取付管の口径、自治体の最小径・勾配に合うか
  • 施工できる勾配、梁貫通、天井内納まり、支持と伸縮を確認したか

「大便器は75mm、屋外は100mm」の読み方

大便器の表に出てくる75mmは、器具に付属するトラップ口径や、地域の設計基準における横枝管の最小径として現れる値です。現行の建築基準法施行令第129条の2の4や告示第1597号が、すべての大便器排水管に全国一律で75mmを直接指定しているわけではありません。

屋外排水管の100mmも同じです。例えば福岡市基準は屋外管渠の最小管径を原則100mmとし、延長3m以下などの条件で75mmを認めています。これは接続先下水道の地域基準であり、全国一律の建築基準法の数値ではありません。

「法令の性能要件」「SHASE等の設計表」「自治体の接続基準」のどれによる数値かを図面や計算書に書き分けると、審査や施工打合せで根拠を説明できます。

勾配は急・緩だけでなく、管径と流速を一組で見る

排水横管は自然流下なので、管径と勾配を別々には決められません。福岡市基準では、やむを得ない場合を除き管内流速0.6〜1.5m/s、やむを得ない場合の最大3.0m/sを示し、屋内汚水排水横管の標準最小勾配を65mm以下=1/50、75・100mm=1/100、125mm=1/150、150mm以上=1/200としています。

ただし、この数値も地域基準の一例です。「勾配を急にすると必ず水だけが先に流れる」「1/100なら常に正解」といった短絡は避け、採用する規準の許容負荷表と流速条件を同時に確認します。実務者の解説でも、屋内排水は器具排水負荷単位法、集合住宅等は定常流量法、外構排水はマニング式など、物件と行政によって計算方法を使い分けています。

通気管・トラップ・掃除口は管径計算と同時に決める

通気管

告示第1597号が求めるのは、排水管内と大気圧との差でトラップが破封しないよう通気管を有効に設けること、汚水で通気を妨げないこと、直接外気へ衛生上有効に開放することです。告示には一律の通気管径表はありません。

国土交通省の官庁施設向け「建築設備設計基準 令和6年版」は、通気管の管径を排水管径と排水負荷単位に基づいて選ぶとしています。排水槽の通気を単独で大気開放することや、通気立て管・伸頂通気管を途中で縮径しないことも同時に確認します。

排水トラップ

封水深50〜100mmは告示第1597号に明記された法令上の数値です。二重トラップを避け、臭気・衛生害虫の移動を防ぎ、汚物が付着・沈殿しにくく、清掃できる構造とします。ここは設計表の目安ではなく、告示の要求として区別できます。

掃除口・ます

告示第1597号は「掃除口を設ける等、保守点検を容易に行える構造」を求めますが、全国一律の15m間隔や「管径の1.5〜2倍の作業空間」は定めていません。掃除口の位置・間隔はSHASE、発注者仕様、自治体基準で確認します。

福岡市基準では、屋外排水管の延長が管径の120倍を超えない範囲で適切な位置にますを設け、ますを設けにくい始点・会合点・屈曲点・中間点では掃除口で代替できるとしています。旧記事の「横主管15m以内ごと」という断定は、管径や地域条件を落としていました。

JIS適合は材料品質の確認であり、管径計算の代わりではない

JIS K 6741は硬質ポリ塩化ビニル管、JIS K 6739は排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手の規格です。塩化ビニル管・継手協会の規格一覧では、K 6741にVP・HIVP・VM・VU管、K 6739にDV継手が整理されています。

JIS適合は寸法・材質・性能・互換性の確認に使います。管径は、負荷計算、勾配、温度、圧力の有無、耐火区画貫通、支持、伸縮、製造者の適用条件を合わせて決めます。「JIS品だから排水能力も足りる」とは判断できません。

排水管径の計算書に残すチェックリスト

  • □ 計算区間を横枝管・立て管・横主管・屋外管に分けた
  • □ 採用した規準名と版年、自治体基準を記載した
  • □ 器具の洗浄方式・用途・使用頻度を確認してdfuを拾った
  • □ 立て管は階数・ブランチ間隔・1階分・全体負荷を区別した
  • □ 横主管は勾配と同じ列の許容負荷を使った
  • □ 最大トラップ口径、器具製造者の接続条件を確認した
  • □ 通気方式・通気管径・大気開放位置を同時に決めた
  • □ トラップ封水深、二重トラップ、掃除口の保守動線を確認した
  • □ 公共ます・取付管・下水道管理者の条件と整合した
  • □ 縮径、逆勾配、内径段差が生じない納まりを図面で確認した

よくある質問

大便器の排水管は75mmにすれば適合ですか?

75mmはよく使われる値ですが、それだけでは適合を確定できません。洗浄方式と使用頻度からdfuを拾い、同じ横枝管に接続する器具数を合算し、採用する規準の許容負荷表へ当てます。屋外管はさらに自治体基準と公共ますへの接続条件を確認します。

洗浄弁式大便器は6dfuですか、8dfuですか?

一律ではありません。SHASEの調査資料には建物用途に応じた4・6・8の使い分けが示され、福岡市基準の洗浄弁式は8です。採用する表、建物用途、器具の洗浄水量・使用頻度を明記してください。器具名だけで6に固定すると過小評価になる場合があります。

勾配1/100なら100mm管は何dfuまでですか?

どの区間の表かで変わります。福岡市基準の例では、100mmの排水横枝管は160dfu、勾配1/100の横主管は180dfuです。216dfuは同じ表の勾配1/50側です。数値だけを覚えず、「横枝管か横主管か」「勾配はいくつか」をセットで記録してください。

SHASE-S 206は法令ですか?

法令ではなく、空気調和・衛生工学会の技術規準です。実務上の重要な設計根拠ですが、法令の性能要件、発注者仕様、自治体の排水設備基準と併せて使います。図面や計算書では「法令による値」と「採用した技術規準による値」を分けて記載してください。

次に確認しておくべきこと

管径が決まったら、同じ系統で次を先に確認すると、施工段階の手戻りを減らせます。

  • 通気方式: 個別通気・ループ通気・伸頂通気等と、横走り部の高さ
  • 防火区画貫通: 令129条の2の4第1項第7号と認定工法
  • 間接排水: 機器排水、オーバーフロー管、水抜管の排水口空間
  • 維持管理: 掃除口・ますへ清掃器具を通せる位置と作業空間
  • 構造・意匠調整: 梁貫通、天井高さ、勾配、保温・防露、支持
  • 接続協議: 下水道管理者の排水設備基準、公共ます・取付管

給水側と排水側の空間を取り違えないため、受水槽・機器排水がある系統では吐水口空間と排水口空間の違いも合わせて確認してください。

参照した資料

法令・規準・自治体基準は改正されます。設計・申請に使う際は、着手時点の版と当該下水道管理者の基準を確認してください。