防火区画の貫通処理と1mルール|配管・告示・大臣認定の判断フロー
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防火区画を貫通する配管を「両側1m、不燃材料で造る」のは、建築基準法施行令第129条の2の4第1項第7号イの適合方法です。同号には、告示で定める外径等の条件に適合させる「ロ」と、国土交通大臣認定による「ハ」もあります。どの配管にも一律に「両側1mを金属管に替える」と判断する前に、採用する経路を確認します。
一方、令第112条第20項が定めるのは、管と防火区画との隙間を不燃材料で埋めることです。管の構造と隙間の処理は別の確認事項です。この記事では、建築基準法の防火区画を中心に、消防法の令8区画・共住区画、衛生機器、ダクトとの違いまで整理します。
法令確認日:2026年9月7日。e-Govで現行として提供される施行令と、国土交通省・消防庁の告示、通知を確認しています。個別工事では、適用時点の法令、確認図書、認定書・施工要領を照合してください。
防火区画を貫通する配管の1mルールと、隙間の処理を分ける
根拠は令第129条の2の4第1項第7号イ
同号イは、管が区画を貫通する部分と、その部分からそれぞれ両側に1m以内の部分を不燃材料で造る方法を定めています。壁や床の厚みを含めた全体が1mという意味ではありません。管と継手の材質、各側の範囲、保温材等を含む納まりを図面で確かめます。
| 確認するもの | 根拠と見る箇所 |
|---|---|
| 管そのものの適合方法 | 令第129条の2の4第1項第7号。イ・ロ・ハのいずれに適合させるか |
| 管と区画の隙間 | 令第112条第20項。モルタルその他の不燃材料による充填 |
| 貫通する壁・床の区分 | 確認図書の区画種別、構造、要求性能。令第113条の防火壁・防火床、第114条の界壁等も同号の対象に含まれる |
この二つを混ぜると、「モルタルを詰めたから管も適合している」「認定品を付けたから隙間は見なくてよい」という判断になります。管の適合経路を特定し、その経路に対応する貫通部全体の施工を確認するのが順序です。根拠:建築基準法施行令第112条第20項、第129条の2の4第1項第7号。
パイプシャフトのただし書きは「PS内なら免除」ではない
第7号のただし書きは、所定の1時間準耐火構造の床・壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト等の中にある部分を対象としています。図面に「PS」と書かれているだけで該当すると判断せず、周囲の区画構成と対象部分を確認します。管がシャフトから出る貫通部まで、まとめて対象外にしてはいけません。
告示仕様と大臣認定工法を選ぶ判断の型
| 経路 | 確認する条件 |
|---|---|
| イ:不燃材料による方法 | 貫通部分と、それぞれ両側1m以内の管を不燃材料で造る |
| ロ:告示の外径等による方法 | 管の用途、材質、肉厚、覆い、貫通する構造等を告示第1422号の該当箇所に照合する。施行令の外径条件は、告示値「未満」。耐火二層管には、貫通部と各側1m以内を耐火二層管とする条件もある |
| ハ:大臣認定による方法 | 要求される遮炎性能に適合する認定と、その認定で定める壁・床、開口、管・ケーブル、材料、施工条件を照合する |
ロ又はハで適合させる場合に、イの1m条件を別途すべてに上乗せする読み方はしません。ただし、採用する告示仕様や認定が定める施工範囲・材料条件は満たす必要があります。「1m以内に樹脂が見える」だけでも、「認定シールがある」だけでも判定は完了しません。
管の外径を定める告示は第1422号。2025年の改正も確認する
ロに対応するのは、平成12年建設省告示第1422号「準耐火構造の防火区画等を貫通する給水管、配電管その他の管の外径を定める件」です。告示第1369号は「特定防火設備の構造方法」を定めるもので、配管の外径表や不燃材料一覧の根拠として使う番号ではありません。
告示第1422号は、令和7年国土交通省告示第509号により2025年7月4日に改正・施行され、耐火二層管について、内管・外管の寸法と貫通する床・壁の構造等の条件が追加されました。改正後の第二第1項の表の「三」では、貫通部分とそれぞれ両側1m以内を耐火二層管とすることも条件です。この耐火二層管をロで適合させる場合にも、1mの施工範囲がなくなるわけではありません。古い外径表だけで「耐火二層管は必ず個別認定」と決めず、改正後の第二と、その現場の材料・構造を照合します。
国土交通省の技術的助言は、管の寸法だけでなく、貫通先の構造方法も確認するよう求めています。さらに、充填材の落下防止や、せっこうボードにモルタルを施工する組合せなど、区画の材料強度を下げない配慮を挙げています。外径表に合うことと、その壁に施工できることは別の確認です。告示第509号の新旧対照表・国住指第143号(2025年7月4日)、第2「運用上の留意点」。
認定工法の遮炎時間は一律20分ではない
同号ハには20分・45分・1時間の区分があります。どの時間が必要かは、同号ハの括弧書きと、貫通する防火区画等の根拠規定に照らして読みます。壁の耐火時間だけから機械的に決めたり、「PS020で始まる認定ならどこでもよい」と扱ったりしてはいけません。
確認するのは製品名だけでなく、その施工条件に対応する認定番号と別添仕様です。例えば積水化学工業のプロセレクトでは、壁の仕様が異なる工法を別の認定番号で案内しています。認定の表にある寸法の範囲、使用材料、施工要領と現物を比べます。「1mmでも違えば必ず不適合」という一律の判定ではなく、認定に定める範囲・許容条件を外れていないかを確認します。メーカー一次資料:プロセレクトの工法別適用範囲・標準施工図。
衛生機器を1m以内で接続する特例は、どの区画の話か
便器等の材質が不燃材料で、樹脂製の排水ソケット等が衛生機器と床材で覆われている場合の扱いは、消防庁通知に具体的な記載があります。ただし、その通知の対象は消防法の令8区画・共住区画を貫通する配管等です。建築基準法の防火区画一般に、そのまま広げられる特例ではありません。
現行の確認資料は、平成19年消防予第344号を令和6年消防予第156号で改正した通知です。別添「令8区画及び共住区画を貫通する鋼管等の取扱いについて」第1項には、鋼管等を使用する範囲と、衛生機器接続の条件が書かれています。衛生機器の不燃性だけでなく、接続部に塩化ビニル製排水ソケット・ゴムパッキン等を使う場合の被覆条件も読みます。
ここでの実務上の分岐は、「便器が陶器か」より先に「その壁・床は何の法令に基づく区画か」です。建築基準法と消防法の両方の規定が関係する箇所は、それぞれの適合を確認します。消防予第156号(2024年3月29日)、別添1に収録された改正後の第344号通知。
空調換気設備のダクトと防火ダンパーは別に確認する
換気・暖房・冷房設備の風道が防火区画を貫通する場合は、令第112条第21項が関係します。貫通部分又はその近接部分に、同項の要件に適合する防火設備を所定の方法で設ける規定です。管のイ・ロ・ハを、そのままダクトに当てはめません。
同項では、火災による煙の発生又は温度の急激な上昇に応じた自動閉鎖と、閉鎖時の遮煙性能が要求されています。要求される防火設備の区分、採用する構造方法・認定、設置方法、点検できる納まりを一組で確認します。風道の材料には令第129条の2の4第1項第6号も関係し、その適用対象の確認が必要です。
温度ヒューズの作動温度や感知器との連動方式は、適用する告示・機器仕様に戻って選びます。告示第1399号は耐火構造の構造方法を定める告示であり、それを根拠にダンパーの作動温度を全国一律の値とする説明は適切ではありません。施行令第112条第21項、第129条の2の4第1項第6号・日本法令索引:平成12年建設省告示第1399号。
施工前から隠蔽前までの確認フロー
私なら、配管の長さを測る前に、図面の区画種別と採用経路を書き出します。測るべき範囲も、手元に必要な資料も、そこで変わるからです。次の表は編集部が整理した確認メモで、法定様式や適合証明書ではありません。
| 段階 | 図面・現物・記録で確かめること |
|---|---|
| 区画を特定 | 階・通り芯・貫通箇所の番号、壁か床か、区画種別、構造、要求性能を確認図書と照合 |
| 経路を特定 | 建築基準法側はイ・ロ・ハ又はただし書きの適用箇所を明記。消防法側の規定が関係する場合は別欄で確認 |
| 材料・寸法を照合 | 管種、外径、肉厚、継手、保温・被覆、開口、壁厚・床厚、充填材を採用仕様に対応づける |
| 施工を確認 | 充填範囲、巻付け・固定、支持、隙間、床下面の脱落防止等を、その工法の施工要領と照合 |
| 隠蔽前に記録 | 位置が分かる全景、寸法・材料・施工状態の写真、認定番号又は告示の参照箇所を同じ箇所番号で保管 |
不一致が見つかったら、「不燃材を足せばよい」とその場で補修方法を決めず、どの条件を満たしていないかを設計・監理者と共有します。認定工法では、材料の追加や異なる製品の組合せも、認定仕様から外れる場合があります。是正後に必要な確認と、隠れる前に残す記録まで揃えることが重要です。
国土交通省の施設管理者向けガイドブックも、配管・風道の貫通処理、充填の状態、部材の穴や破損を点検事項として示しています。これは官庁施設向けの保全資料であり、個別工法の施工要領を置き換える資料ではありません。『官庁施設の施設管理者のための防災性能確保ガイドブック』(令和4年6月)、III-16。
防火区画の貫通処理で迷いやすい三つの判断
貫通部から1m以内に樹脂管があれば、すべて不適合か
その情報だけでは決まりません。イで適合させる管なのか、ロの告示条件又はハの認定で適合させる管なのかを確認します。後者でも材料・施工範囲等の条件を満たす必要があります。隙間の処理も別途確認します。
モルタルを充填すれば、大臣認定は不要か
充填した事実だけでは判断できません。管がイ又はロの条件を満たすかを確認し、ハで適合させるなら、その認定で定める充填・施工条件に従います。告示第1422号を使う耐火二層管でも、管の寸法と貫通先の構造の両方が確認事項です。
認定シールがあれば、施工写真や認定書は見なくてよいか
シールだけでは、現物が認定仕様に一致することまで分かりません。認定番号、別添仕様、使用材料、開口と壁・床の条件、隠蔽部分の施工記録を対応づけます。シールの存在を、隠れた部分の確認の代わりにしないことです。
まとめ:1mを測る前に、区画と適合経路を特定する
防火区画の貫通処理は、区画種別 → 管の適合経路 → 隙間・施工条件 → 隠蔽前の記録の順で整理すると、確認漏れを見つけやすくなります。両側1mを不燃材料で造る経路は令第129条の2の4第1項第7号イで、ロの耐火二層管にも告示固有の1m条件があります。隙間の処理は令第112条第20項。衛生機器の消防法上の特例と、ダクトの防火設備は、対象と根拠を分けて扱います。
同じ配管図で隣に確認するのは、必要な管径・通気と、給水・排水の衛生上の離隔です。排水管サイズの記事では採用する設計表と計算区間、吐水口空間の記事では適用する法体系を整理しています。防火措置のための変更が、排水能力や保守性を損なわないかも併せて確認してください。
訂正履歴(2026年9月7日):1mの根拠条文と三つの適合経路、認定工法の遮炎時間、告示番号、衛生機器の特例の適用範囲、ダクトとの混同を見直しました。
補足資料:告示第1369号の新旧対照表(特定防火設備の構造方法)。古い資料の条番号や表を使う場合も、国土交通省の告示制定・改正情報で、その後の改正を確認してください。