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自然排煙の設置要否・有効開口面積・告示番号の整理

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自然排煙は、建築基準法施行令の3つの条文にまたがって規定されています。設置義務の判定(令126条の2)、排煙上の無窓居室の判定(令116条の2)、排煙設備の構造基準(令126条の3)は、それぞれ別の条文で別の役割を持ちます。

先に答え:「1/50」という基準は条文上2種類あります。令116条の2第1項第2号の1/50は、居室が「排煙上の無窓居室」に該当するか(=排煙設備の設置義務が生じるか)を判定する基準(分母は居室の床面積)。令126条の3第8号の1/50は、排煙口が防煙区画部分の1/50以上かつ直接外気に接していれば排煙機(機械排煙)の設置を省略できる、という自然排煙の成立条件(分母は防煙区画部分の床面積)です。「天井から80cm以内」という有効範囲は、令和7年11月1日施行の国土交通省告示第992号・第995号により、天井高が2.6m以下の場合は80cm以内、2.6mを超える場合は床面から1.8m以上という天井高に応じた基準に変わっています。旧本文が引用していた「昭和38年建設省告示第1736号」は、今回確認した公開情報の範囲では実在を確認できませんでした。

この記事では、設置義務・無窓居室判定・構造基準を条文ごとに分けたうえで、有効開口面積の算定条件、防煙壁による区画、設置免除の告示を整理します。

自然排煙を規定する法令の全体構造

排煙設備の設置義務(令126条の2)

建築基準法施行令第126条の2第1項は、次のいずれかに該当する建築物・居室に排煙設備の設置を義務付けています。

設置義務の対象 条件
特殊建築物 別表第一(い)欄(一)〜(四)項の用途で延べ面積500㎡超
階数3以上の建築物 延べ面積500㎡超
排煙上の無窓居室 令116条の2第1項第2号に該当する居室
大規模建築物の居室 延べ面積1,000㎡超の建築物で、居室の床面積が200㎡超

ただし、階数3以上の建築物と大規模建築物の居室については、「高さ31m以下の部分にある居室で、床面積100㎡以内ごとに防煙壁(準耐火構造または不燃材料の間仕切壁・垂れ壁・はり等)で区画されたもの」は、この設置義務から除かれます(令126条の2第1項本文のかっこ書き)。この除外条件は告示ではなく令126条の2本文自体に規定されています。

さらに同項ただし書きは、次の建築物・部分を設置義務の対象外としています。

  • 別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物のうち、準耐火構造の床・壁または防火設備で区画された部分(床面積100㎡以内、共同住宅の住戸は200㎡以内)
  • 学校(幼保連携型認定こども園を除く)・体育館・ボーリング場・スキー場・スケート場・水泳場・スポーツ練習場
  • 階段の部分、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビーを含む)等
  • 機械製作工場・不燃性物品倉庫等(主要構造部が不燃材料)
  • 火災時に避難上支障のある高さまで煙・ガスの降下が生じない部分として国土交通大臣が定めるもの(告示1436号、次章)

2種類の1/50を区別する(令116条の2と令126条の3)

令116条の2第1項第2号は「排煙上の無窓居室」の判定条文です。「開放できる部分(天井又は壁(床面から天井までの垂直距離に応じて国土交通大臣が定める部分に限る)にある部分に限る)の面積の合計が、当該居室の床面積の五十分の一…以上のもの」を無窓居室としない、と定めています。この1/50を下回る居室は「排煙上の無窓居室」となり、令126条の2第1項の設置義務の対象に含まれます(=排煙設備を設けなければならない)。

令126条の3第8号は、排煙設備の設置が決まった後の話です。「排煙口が防煙区画部分の床面積の五十分の一以上の開口面積を有し、かつ、直接外気に接する場合を除き、排煙機を設けること」と定めており、排煙口が防煙区画部分の1/50以上の開口面積を持ち、かつ直接外気に接していれば、排煙機(機械排煙)を設けなくてよい、つまり自然排煙だけで足ります。この記事のタイトルにある「自然排煙の設置要否」を判定する1/50は、こちらの126条の3第8号を指します。

2つの1/50は分母が異なります(116条の2は居室の床面積、126条の3第8号は防煙区画部分の床面積)。同じ割合でも、判定している内容(設置義務の有無/機械排煙の要否)が異なる点に注意します。

排煙口の有効開口面積の算定条件

天井高による有効範囲の分岐(令和7年11月施行の新告示)

排煙上有効な開口部の範囲(天井からの距離)は、令和7年10月31日公布・同年11月1日施行の国土交通省告示で、天井高に応じた基準に改められています。

令和7年国土交通省告示第992号(令116条の2第1項第2号・第128条の3の2第1号関連):「床面から天井までの垂直距離が2.6m以下の場合→天井から下方80cm以内の距離にある部分」「2.6mを超える場合→床面からの高さが1.8m以上の部分」
令和7年国土交通省告示第995号(令126条の3第1項第3号関連・排煙口の設置位置):同様に天井高2.6m以下は80cm以内(防煙壁の丈が80cm未満ならその値)、2.6m超は1.8m以上(防煙壁下端の高さが1.8m超ならその値)

「天井から80cm以内」は天井高2.6m以下の場合の基準で、天井高が2.6mを超える居室では「床面から1.8m以上」という別の基準になります。天井高が高い居室で一律80cm基準を適用すると、実際より厳しい(または緩い)判定になる可能性があるため、対象居室の天井高を先に確認します。

有効開口面積の算定とサッシ形状

引き違い窓・すべり出し窓・内倒し窓など、サッシの形状によって開口部の実際の排煙有効面積(全開口面積そのものではない部分)が変わることは実務上広く知られています。ただし、この記事の作成時点で確認できた公開情報の範囲では、「昭和38年建設省告示第1736号」という番号でサッシ形状ごとの算定係数を定める告示の実在を確認できませんでした。「引き違い窓は全開時の50%程度」といった係数は、設計実務・メーカー資料で使われる目安として扱い、法令が一律に定める数値として断定しません。採用するサッシの有効開口面積は、メーカーの製品仕様書またはJIS等の試験方法に基づく数値を個別に確認します。

防煙壁による区画と設置免除

防煙壁の定義と区画(令126条の2・126条の3)

「防煙壁」は、令126条の2第1項本文が定義する部材で、間仕切壁、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁・はり等(準耐火構造または不燃材料製)を指します。令126条の3第1号は、排煙設備を設ける建築物を床面積500㎡以内ごとに防煙壁で区画することを求めています。

告示1436号が定める設置義務の除外

平成12年建設省告示第1436号「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件」は、令126条の2第1項第5号の委任を受けた告示で、一定の要件を満たす排煙設備・防煙区画・天井高・内装仕上げ等の組み合わせを満たす部分について、同項本文の設置義務を除外するものです。要件は号ごとに異なり(例:天井高3m以上、内装を準不燃材料で仕上げる、排煙機の能力を通常より高くする等)、複数の要件を同時に満たす必要があります。「高さ31m以下・床面積100㎡以内」という条件は、まず令126条の2第1項本文のかっこ書き(防煙壁による区画の除外)に規定されています。告示1436号の号の中にも、内装仕上げ等の他の要件と組み合わせた形で類似の数値が別途登場する場合があるため、どちらの根拠に基づいて緩和を適用するのかを条文・告示の号まで特定して個別に確認します。

排煙設備の構造基準と実務上の留意点

手動開放装置の設置高さ(令126条の3第5号)

令126条の3第5号は、排煙口の手動開放装置について「壁に設ける場合においては床面から80cm以上1.5m以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合においては床面からおおむね1.8mの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること」と定めています。排煙口が高所にある場合、手動開放装置と連動させる実務上の対応が必要になることがあります。

審査機関との協議で確認する事項

排煙計算を審査機関に説明する際は、設置義務の根拠(令126条の2)、無窓居室の判定(令116条の2)、構造基準(令126条の3)のどれに基づく主張かを条文番号で区別して提示します。天井高の変更は有効開口範囲の判定(令和7年告示992号・995号の2.6m基準)に影響するため、意匠・設備変更が生じた場合は排煙計算を再確認します。

自然排煙の設計手順

防煙区画の策定と必要開口面積の算出

防煙区画は令126条の3第1号により床面積500㎡以内ごとに設定します。各区画の床面積が確定したら、令116条の2第1項第2号に基づき、区画の床面積の1/50以上の有効開口面積を目標値とします。

サッシ選定と有効範囲の確認

採用するサッシの有効開口面積をメーカー仕様で確認し、天井高に応じた有効範囲(2.6m以下は天井から80cm以内、2.6m超は床面から1.8m以上)に収まる配置かを確認します。防煙区画ごとに有効開口面積の合計が目標値を満たすことを、根拠条文とあわせて計算書に記録します。

自然排煙に関するよくある質問

サッシの種類によって有効開口面積の計算結果は変わりますか?

引き違い窓・すべり出し窓・内倒し窓など、形式によって全開口面積に対する排煙有効面積の割合は異なるとされています。ただし、この割合を法令で一律に定めた告示は今回確認できませんでした。採用するサッシメーカーの仕様書や、設計者・審査機関との協議で用いる算定方法を個別に確認します。

天井高によって「天井から80cm以内」の基準はどう変わりますか?

令和7年国土交通省告示第992号・第995号により、天井高が2.6m以下の場合は「天井から下方80cm以内」、2.6mを超える場合は「床面から1.8m以上」が排煙上有効な部分の基準です(令和7年11月1日施行)。天井高の変更は、この2.6mの区分をまたぐ場合に判定基準そのものが変わるため、意匠変更時は必ず再確認します。

手動開放装置の高さ制限や連動義務を怠るとどうなりますか?

令126条の3第5号が定める設置高さ(壁面は床面から80cm以上1.5m以下、天井吊り下げ式はおおむね1.8m)や、高所の排煙口との連動、使用方法の表示を満たさない設計は、完了検査で指摘を受ける対象になります。設計段階で条文に基づいた配置を確認します。

まとめ

自然排煙は、設置義務(令126条の2)・無窓居室の判定(令116条の2)・構造基準(令126条の3)という3つの条文にまたがって規定されており、それぞれの数値がどの条文・告示に由来するかを区別することが実務上の出発点です。天井高による有効範囲の基準(令和7年告示992号・995号)は2025年の改正で天井高2.6mを境に分岐しており、旧来の「一律80cm」という理解は現行制度と一致しません。

項目 基準 一次根拠
設置義務 特殊建築物500㎡超・3階以上500㎡超等 令126条の2第1項
設置義務の判定(無窓居室の1/50) 開放できる部分の合計が居室の床面積の1/50以上なら無窓居室に該当しない 令116条の2第1項第2号
自然排煙の成立(排煙機省略の1/50) 排煙口が防煙区画部分の1/50以上かつ直接外気に接すれば排煙機不要 令126条の3第8号
有効範囲(天井高2.6m以下) 天井から下方80cm以内 令和7年告示992号・995号
有効範囲(天井高2.6m超) 床面から1.8m以上 令和7年告示992号・995号
手動開放装置の高さ 壁面0.8〜1.5m、天井吊り下げ約1.8m 令126条の3第5号

同じ現場では、防煙垂れ壁の設置基準と緩和、歩行距離・重複距離の規定も合わせて確認すると、避難安全に関わる隣接論点を見落としにくくなります。