火気使用室の換気計算と必要換気量の算定基準
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火気使用室(コンロ等の火を使う設備・器具がある室)の換気設備は、建築基準法第28条第3項→同法施行令第20条の3→昭和45年建設省告示第1826号という3段階の階層で規定されています。必要換気量の計算式「V=N×K×Q」も、法令や施行令ではなく告示1826号に定められています。
先に答え:計算の前に、①対象の器具が「火を使用する設備・器具」に該当するか(IH等は原則対象外)、②免除条件(発熱量+開口面積の両方)を満たすか、③排気フードの形状(定数Nが20か30か)を先に確認します。告示1826号は令和5年3月20日国土交通省告示第207号で改正されていますが、K値・N値の数値表自体は今回確認した範囲では改正前後で変わっていません。
この記事では、V=NKQの各変数の出典、免除条件、給排気口の配置基準、IH・FF式器具の扱いを、法令の階層ごとに整理します。
火気使用室の換気設備を規定する法令の階層
法28条3項・施行令20条の3・告示1826号の役割分担
火気使用室における換気設備の設置は、建築基準法第28条第3項が義務の根拠です。同項の委任を受けた建築基準法施行令第20条の3が、換気設備の設置対象・免除条件・構造の技術的基準を規定します。「建築基準法第20条の3」「建築基準法施行規則第20条の3」という条文は存在しません(施行令の条文です)。さらに施行令20条の3第2項第1号イは、給排気口の有効開口面積や換気扇等の必要有効換気量の具体的な数値を「国土交通大臣が定める数値」に委任しており、その数値と計算式を定めているのが昭和45年12月28日建設省告示第1826号「換気設備の構造方法を定める件」です。V=NKQの式は、法令ではなくこの告示に規定されています。
| 階層 | 根拠 | 定める内容 |
| 法律 | 建築基準法第28条第3項 | 火気使用室への換気設備設置義務の根拠 |
| 政令 | 建築基準法施行令第20条の3 | 設置対象・免除条件・構造の技術的基準の大枠 |
| 告示 | 昭和45年建設省告示第1826号(令和5年国交省告示第207号で改正) | V=NKQ等の計算式、K値・N値の具体的な数値 |
令和5年改正で変わった点・変わらなかった点
告示1826号は令和5年3月20日国土交通省告示第207号(令和5年4月1日施行)で改正されています。国土交通省が公開する新旧対照表を確認したところ、改正箇所は「有効換気量」から「必要有効換気量」への呼称変更や、他の条項の枝番整理が中心で、K値の別表・N値(20/30/40)の数値そのものは、今回確認した範囲では改正前後で変わっていません。ただし、古い解説記事や書籍が「有効換気量」という旧呼称で引用している場合、告示の版が古い可能性があるため、参照する資料の発行年に注意します。
必要換気量の基本算定式と定数
算定式V=NKQを構成する各変数
告示1826号第三は、排気口・排気筒(フードなし)の場合「V=40KQ」、排気フードを有する排気筒の場合「V=NKQ」という式を規定しています。
- V:換気扇等の必要有効換気量(単位:一時間につき立方メートル)
- N:排気フードの構造により20または30(排気フードがない場合は固定で40)
- K:燃料の単位燃焼量当たりの理論廃ガス量(単位:立方メートル)
- Q:火を使用する設備・器具の実況に応じた燃料消費量(単位:キロワットまたは一時間につきキログラム)
K値は告示の別表に燃料種別ごとの数値が定められています。都市ガスとLPガス(プロパン主体)は1kWhにつき0.93立方メートル、灯油は1kgにつき12.1立方メートルです。器具の実際の発熱量(Q)は、メーカーの製品仕様書に記載された数値を使います。
排気フードの構造による定数Nの選定基準
排気フードを設けない場合、Nは一律40です。排気フードを設ける場合、告示1826号第三の四が定める2つの構造区分によりNが変わります。
N=30:排気フードの高さ(火源から排気フード下端までの高さ)が1m以下で、火源等を覆うことができる構造(火源に面して不燃材料の壁等がある場合、その部分は除く)。
N=20:排気フードの高さが1m以下で、火源等とその周囲(フード高さの1/2以内の水平距離)を覆うことができ、かつ下部に5cm以上の垂下り部分を有し、集気部分が水平面に対し10度以上の傾斜を有する構造。
「深いフードはN=20、浅いフードはN=30」という単純な言い換えは、告示が定める要件(垂下り部分・傾斜角度の有無)を正確に表していません。N=20の構造は、火源の周囲まで覆う範囲の広さに加え、垂下り部分と傾斜という具体的な形状要件を満たす必要があります。採用するレンジフードがどちらの区分に該当するかは、メーカーの製品仕様(フードの高さ・捕集範囲・垂下り寸法・傾斜角度)で個別に確認します。
換気設備設置免除の条件
住宅の調理室・調理室以外の室における免除規定
施行令20条の3第1項は、火気使用室のうち換気設備の設置義務そのものが生じない室を定めています。発熱量の基準と、換気上有効な開口部の基準は、どちらか一方ではなく両方を満たす必要があります。
| 対象室 | 発熱量の基準 | 開口部の基準 |
| 住宅・住戸の調理室(延べ面積100㎡以内) | 発熱量の合計12kW以下 | 調理室の床面積の1/10以上(0.8㎡未満のときは0.8㎡)の有効開口面積を有する窓等を換気上有効に設置 |
| 調理室以外の室(給湯室等) | 発熱量の合計6kW以下 | 換気上有効な開口部を設置(具体的な面積の数値は令に明記なし) |
発熱量の合計には、密閉式燃焼器具等(FF式等)や煙突を設けた設備・器具の発熱量は含みません。開放式の器具だけを合算します。標準的な都市ガス用コンロは1口あたり4.65kW程度のため、2口コンロ(約7.32kW)のみのキッチンは発熱量の基準を満たす可能性がありますが、免除には加えて上表の開口部が必要です。発熱量が基準以下でも、換気上有効な開口部がなければ設置義務は免除されません。個々の器具の発熱量はメーカー仕様書の数値を正確に合算し、開口部の有効開口面積は建具の形式(引違い・すべり出し等)による低減も踏まえて算定します。
一般居室の採光・換気(法28条2項)との違い
「窓の有効面積が床面積の20分の1以上」という基準は、建築基準法第28条第1項が定める居室一般の採光・換気規定であり、火気使用室の換気設備(法28条3項・施行令20条の3)とは別の条文・別の制度です。火気使用室の免除条件(前項の表)と、一般居室の採光・換気規定を同じ「緩和」として混同しないよう、対象条文を分けて確認します。特殊建築物の居室や無窓居室等は、いずれの基準も個別の確認が必要です。
給排気口の配置と材料制限
施行令20条の3第2項に基づく給排気口の設置位置
施行令20条の3第2項第1号イは、給排気口の設置位置を次のように定めています。
- 給気口:換気設備を設けるべき調理室等の天井の高さの2分の1以下の高さの位置(煙突を設ける場合、または換気上有効な排気のための換気扇等を設ける場合は、適当な位置でよい)
- 排気口:天井または天井から下方80cm以内の高さの位置(煙突または排気フードを有する排気筒を設ける場合は、適当な位置でよい)
この位置基準は、煙突や換気扇等の設置状況によって「適当な位置」に読み替えられる例外があるため、原則の位置だけを固定値として覚えるのではなく、採用する設備構成が例外条件に該当するかを個別に確認します。
排気フードの材料制限
施行令20条の3第2項第4号は「火を使用する設備又は器具の近くに排気フードを有する排気筒を設ける場合においては、排気フードは、不燃材料で造ること」と定めています。排気フードを不燃材料にする義務そのものはこの号に規定されており、建築基準法第2条第1項第3号は「不燃材料」という用語の定義規定です。両者は義務規定と定義規定という別の役割なので、混同せずに引用します。実務では、キッチンパネル等の準不燃材料をフード周りの仕上げに使うと、この不燃材料要件を満たさない可能性があるため、製品の国土交通大臣認定番号(不燃:NM等)を確認します。
非火気器具・密閉式器具の換気設計
IHクッキングヒーター等、電化厨房の換気
IHクッキングヒーターは裸火を使用しないため、建築基準法上の「火を使用する設備又は器具」には該当せず、法第28条第3項・施行令20条の3に基づく換気設備の設置義務は原則として生じません。ただし、調理に伴う水蒸気・油煙・臭気は発生するため、法的義務がない場合でも、業界の技術資料(メーカーの技術指導指針等)では300立方メートル毎時程度の換気量確保が推奨されることがあります。この推奨値は法令上の義務ではなく、居住性・設計品質の観点からの実務上の目安として扱います。
密閉式燃焼器具(FF式)の除外規定と24時間換気の重複回避
密閉式燃焼器具等(燃焼に必要な空気を屋外から直接取り入れ、廃ガスを直接屋外に排出する構造の設備・器具)を設けた室は、施行令20条の3第1項第1号により、他に火を使用する設備・器具がない限り、同条の換気設備設置義務の対象から除外されます(「施行規則」ではなく施行令の規定です)。
ただし、シックハウス対策としての24時間換気(法第28条の2)は、火気使用のための換気(V=NKQ)とは目的も法的根拠も別の制度です。FF式器具があることを理由に、その室の24時間換気(換気回数0.5回/h以上)まで免除されるわけではありません。それぞれの要件を個別に確認します。
火気使用室の換気に関するよくある質問
IHクッキングヒーターでも換気計算や設備の設置は義務付けられますか?
IHクッキングヒーターは建築基準法上「火を使用する設備又は器具」に該当しないため、法第28条第3項に基づく換気設備の設置義務は原則として発生しません。ただし、水蒸気・油煙対策として、業界の技術指導指針等が推奨する換気量(目安として300立方メートル毎時程度)を確保することが実務では推奨されます。
排気フードの定数Nの選び方は、フードの形状でどう変わりますか?
告示1826号第三の四により、排気フードの高さが1m以下で火源等を覆う構造はN=30、火源等とその周囲(フード高さの1/2以内)を覆いかつ5cm以上の垂下り部分・10度以上の傾斜を有する構造はN=20です。単純な「深い/浅い」の見た目ではなく、垂下り部分と傾斜角度という具体的な形状要件を製品仕様で確認します。
給気口や排気口の設置高さに法的制限はありますか?
施行令20条の3第2項第1号イにより、給気口は天井高さの2分の1以下、排気口は天井または天井から下方80cm以内が原則です。ただし煙突や換気扇等を設ける場合は、この原則位置によらず「適当な位置」とすることができる例外があります。採用する設備構成がこの例外に該当するかを個別に確認します。
まとめ
火気使用室の換気は、法28条3項(義務の根拠)、施行令20条の3(免除条件・技術的基準の大枠)、告示1826号(V=NKQの計算式・K値/N値の数値)という3階層で規定されています。免除条件は発熱量と開口部の両方を満たす必要があり、一般居室の採光・換気規定(法28条2項)とは別の制度です。
同じ現場では、排煙計算(自然排煙の告示に基づく算定根拠)、ダクトの風量計算(静圧計算とダクトの風量計算)、防火区画の貫通処理など、隣接する確認項目も合わせて確認すると、火気使用室単体では見落としがちな論点を防げます。内装制限の対象建物・室と仕上げは内装制限の記事でも確認できます。