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歩行距離と重複距離|令120条の表と告示208号を条文どおりに整理

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結論 — 歩行距離は令120条の表、重複距離はその「1/2」

歩行距離(居室の各部分から直通階段の一に至る距離)の上限は、建築基準法施行令第120条第1項の表で、居室の種類 × 主要構造部の構造で決まります。左が「主要構造部が準耐火構造(特定主要構造部が耐火構造を含む)又は不燃材料で造られている場合」、右が「その他の場合」:

  • (一) 採光無窓居室(令116条の2第1項第1号の窓等を有しない居室。告示の基準に適合するものを除く)、又は法別表第1(い)欄(四)項の用途の主たる居室 … 30m / 30m
  • (二) 法別表第1(い)欄(二)項の用途の主たる居室 … 50m / 30m
  • (三) (一)(二)以外の居室 … 50m / 40m

加算・減算 — 準耐火構造又は不燃材料の建築物で、居室および地上に通ずる主たる廊下・階段等の壁(床面から1.2m以下を除く)と天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料とした場合、表の数値に+10m(令120条2項。ただし15階以上の階の居室には適用しない)。15階以上の階の居室は、その2項本文に該当するものを除き−10m(令120条3項)。

重複距離 — 二以上の直通階段が必要な階で、各直通階段に至る歩行経路のすべてに共通の重複区間があるとき、その長さは「前条(令120条)に規定する歩行距離の数値」の2分の1を超えてはならない(令121条3項)。基準となるのは加算・減算を反映した後の数値です。ただし重複区間を経由せずに避難上有効なバルコニー・屋外通路等へ避難できる場合は適用されません。

歩行距離と重複距離は、平面が固まってから直すと階段の位置ごとやり直しになる寸法です。しかも「無窓居室だから30m」「準不燃にしたから+10m」といった条件が重なり合うため、どの数値がどの条文から来ているかを取り違えたまま図面が進みがちなところでもあります。

本記事は、令120条・令121条の条文と、令和5年国土交通省告示第208号の基準を条文どおりに整理し、そのうえで実務で取り違えの起きやすい箇所を示します。

歩行距離の上限は令120条1項の表で決まる

令120条1項は、避難階以外の階(地下街におけるものを除く)について、避難階又は地上に通ずる直通階段を、各居室からその一に至る歩行距離が表の数値以下となるように設けなければならない、と定めています。地下街が柱書で適用範囲から外れている点は見落とされがちです。

歩行距離の制限数値を左右する構造と用途の分岐点

数値は居室の種類(縦)と主要構造部の構造(横)の組み合わせで決まります。横軸は「主要構造部が準耐火構造である場合(特定主要構造部が耐火構造である場合を含む)又は主要構造部が不燃材料で造られている場合」と「その他の場合」の2つです。

居室の種類準耐火構造又は不燃材料その他の場合
(一) 令116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室(採光無窓居室。告示の基準に適合するものを除く)、又は法別表第1(い)欄(四)項に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室30m30m
(二) 法別表第1(い)欄(二)項に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室50m30m
(三) (一)の項又は(二)の項に掲げる居室以外の居室50m40m
出典:建築基準法施行令第120条第1項の表(e-Gov法令検索)。単位はメートル。

間違えやすいのは(三)項の「その他の場合」が40mである点です。30mではありません。30/30が並ぶのは(一)項だけで、(二)項の「その他の場合」が30mです。

用途の判定は法別表第1(い)欄に戻る必要があります。(二)項は病院・診療所(患者の収容施設があるもの)・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎など、(四)項は百貨店・マーケット・展示場・キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー・ダンスホール・遊技場などです。条文が求めているのは「その特殊建築物の主たる用途に供する居室」であって、建物内のすべての居室ではありません。

建築基準法施行令第120条が定める直通階段への最短経路

条文が定めているのは「居室の各部分から」直通階段の一に至る歩行距離という要件だけで、測り方そのものは令120条に規定がありません。したがって起点は、その居室のうち階段から最も遠い点になります。扉の位置や部屋の中心ではありません。

経路の取り方(什器を避けるか、柱や間仕切壁をどう迂回するか、廊下のどこを通す線とみなすか)は条文ではなく運用の領域で、『建築物の防火避難規定の解説』や特定行政庁・指定確認検査機関の取扱いによります。一般に、固定されていない什器は障害物として扱わず、柱・耐震壁・間仕切壁のような動かない構造体は迂回して測る扱いが多いものの、これは条文の規定ではないので、事前相談で当該審査先の取扱いを確認するのが確実です。ここを「法令でこう決まっている」と主張すると、根拠を求められたときに出せません。

なお、避難施設等に関するこの節の規定がそもそも適用されるのは、令117条により、法別表第1(い)欄(一)項から(四)項までの用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、採光無窓居室を有する階、又は延べ面積が1,000㎡を超える建築物に限られます。

重複距離の1/2ルールと二以上の直通階段

令121条3項は、二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路の全てに共通の重複区間があるとき、その重複区間の長さは「前条に規定する歩行距離の数値」の2分の1を超えてはならないと定めています。

基準になるのは令120条で定まる規制値であって、実際に測った歩行距離でも、2つの階段への距離を足した値でもありません。条文に「合計」という語はありません。令120条2項・3項は「同項の表の数値とする」と表の値そのものを書き換える形なので、+10mや−10mを適用した場合は、その適用後の数値の1/2が重複距離の上限になります。

令120条で定まる歩行距離の数値重複区間の上限
30m15m
40m20m
50m25m
50m + 10m(準不燃仕上げの緩和適用後) = 60m30m
令121条3項「前条に規定する歩行距離の数値の二分の一」より。

ただし書きも重要です。居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー・屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この1/2の制限は適用されません。重複区間が収まらないときは、階段を動かす前にこちらの成立可能性を検討する価値があります。

避難判定の成否を分ける重複区間の正確な特定手法

重複区間とは、その居室から2つの直通階段のどちらへ向かう場合でも必ず通らざるを得ない共通部分です。条文が「通常の歩行経路の全てに共通の重複区間」と書いているとおり、片方の経路にしか現れない部分は重複区間ではありません。

実務では、行き止まり廊下の奥にある居室や、コアが片側に寄った平面で問題になります。居室の出口から廊下を進み、二方向に分岐する地点までが重複区間になるため、分岐点をどこまで居室側に寄せられるかが設計の勝負どころです。

二方向避難が必要となる2以上の直通階段設置義務の基準

そもそも重複距離の規定は、令121条1項により二以上の直通階段が必要になる階にかかるものです。1項各号の主なものは次のとおりです(条文の要約であり、各号にはさらに細かい除外規定があります)。

  • 1号 劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場の用途に供する階で、その階に客席・集会室等を有するもの(床面積・階数の要件なし)
  • 2号 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が1,500㎡を超えるものに限る)の用途に供する階で、その階に売場を有するもの(階数は問わない。1,500㎡は当該店舗の床面積の合計で、複合用途では店舗部分で判定する)
  • 3号 キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー等の用途に供する階で、その階に客席・客室等を有するもの(5階以下で居室床面積合計100㎡以下かつ避難上有効なバルコニー等と令123条2項/3項適合の直通階段がある場合等を除く)
  • 4号 病院・診療所の階で病室の床面積の合計、又は児童福祉施設等の階で主たる用途の居室の床面積の合計が、それぞれ50㎡を超えるもの
  • 5号 ホテル・旅館・下宿の宿泊室、共同住宅の居室、寄宿舎の寝室の床面積の合計が、それぞれ100㎡を超える階
  • 6号(柱書は「前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの」) 6階以上の階でその階に居室を有するもの。ただし1号〜4号の用途以外の階で、その階の居室の床面積の合計が100㎡を超えず、かつ避難上有効なバルコニー・屋外通路等および令123条2項又は3項に適合する直通階段が設けられているものは除かれます
  • 6号ロ 5階以下の階で、居室の床面積の合計が、避難階の直上階では200㎡、その他の階では100㎡を超えるもの

令121条2項の倍読みを忘れないでください。主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物では、1項の「50㎡」は「100㎡」、「100㎡」は「200㎡」、「200㎡」は「400㎡」と読み替えます。閾値が倍になるため、同じ平面でも構造次第で階段の要否が変わります。

また令121条4項により、階数3以下で延べ面積200㎡未満の建築物の避難階以外の階については、一定の区画等を条件に4号・5号に係る部分(ただし令121条2項が適用される建築物では4号のみ)の適用が除外されます。小規模な共同住宅・児童福祉施設等で効いてくる規定です。

令和5年告示第208号による採光無窓居室の歩行距離の合理化

令120条1項の表(一)項は、採光無窓居室(令116条の2第1項第1号に該当する窓その他の開口部を有しない居室=採光に有効な部分の面積が床面積の1/20以上の窓等を持たない居室)を、構造にかかわらず30mに制限しています。

2023年(令和5年)4月1日施行の改正で、この(一)項に括弧書きが入りました。条文は、当該居室の床面積、当該居室からの避難の用に供する廊下その他の通路の構造並びに消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを、(一)項から除くとしています。この「国土交通大臣が定める基準」が令和5年3月20日 国土交通省告示第208号(最終改正 令和6年3月25日 国土交通省告示第221号)です。

ここで押さえるべきは、告示は「30mを50mに引き上げる」と書いているのではない、という点です。告示に適合すると、その居室は(一)項から外れ、用途に応じて(二)項または(三)項が適用されます。一般的な事務所等であれば(三)項なので、主要構造部が準耐火構造又は不燃材料なら50m、その他の場合は40mです。用途が法別表第1(い)欄(二)項に当たれば(二)項となり、50m / 30m です。「告示に適合すれば一律50m」ではありません。

告示第208号が定める5つの基準(すべて満たす必要がある)

告示第208号は「次に掲げるもの」として第一号から第五号までを列挙しています。これらは選択肢ではなく、すべて満たして初めて(一)項から除外されます。号の中に「イ又はロのいずれか」がある構造です。

基準の内容
次のイ又はロのいずれか。 床面積が30㎡以内の居室(病院、診療所[患者の収容施設があるもの]又は児童福祉施設等[通所のみにより利用されるものを除く]の用に供するもの及び地階に存するものを除く)。 居室及び当該居室から地上に通ずる廊下等(採光上有効に直接外気に開放された部分を除く)が、令第126条の5に規定する構造の非常用の照明装置を設けたものであること
次のイ又はロのいずれか。 居室から直通階段に通ずる廊下等が、不燃材料で造り、又は覆われた壁又は戸(ふすま・障子等を除く)で令第112条第19項第2号に規定する構造(遮煙性能)であるもので区画されていること。 廊下等が、スプリンクラー設備等(自動式のもの)を設け又は消火上有効な措置が講じられた室以外の室(火災の発生のおそれの少ない室を除く)に面しないものであり、かつ、火災の発生のおそれの少ない室に該当する場合を除きスプリンクラー設備等を設け又は消火上有効な措置が講じられたものであること
直通階段が次のイ又はロのいずれか。 階段室が、その他の部分と準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で令第112条第19項第2号に規定する構造であるもので区画されていること。 直通階段が屋外に設けられ、かつ屋内から当該直通階段に通ずる出入口にイの防火設備を設けたものであること
居室から直通階段に通ずる廊下等が、火災の発生のおそれの少ない室(令第128条の7第2項)に該当すること。ただし、不燃材料で造り又は覆われた壁又は戸で令第112条第19項第2号の構造であるもので区画された居室に該当する場合において、令和3年国土交通省告示第475号に基づき煙又はガスの高さを計算し、1.8mを下回らないことを確かめたときはこの限りでない
令第110条の5に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る)を設けた建築物の居室であること
出典:令和5年3月20日 国土交通省告示第208号(最終改正 令和6年3月25日 国土交通省告示第221号)。条文は新日本法規『住宅・建築行政実務』所収の告示本文により確認。

この告示に「特定防火設備」は登場しません。第三号イが求めているのは法第2条第9号の2ロに規定する防火設備(令第112条第19項第2号の構造=遮煙性能を有するもの)であって、令第112条第1項等でいう特定防火設備(遮炎1時間)ではありません。両者は要求される性能も価格帯も違うため、特定防火設備を前提に見積を組むと過大に、逆に「防火設備でよい」と読み違えて遮煙性能のない建具を選ぶと不適合になります。条文の語が「防火設備」か「特定防火設備」かは、必ず現物の告示で確かめてください。

実務上ハードルになりやすいのは第五号です。「建築物の居室であること」と書かれているとおり、自動火災報知設備は当該居室だけでなく令第110条の5の基準に従って建築物に設けられている必要があります。歩行距離の緩和だけを目当てに居室単位で考えると、ここで足をすくわれます。第一号ロの非常用照明も、居室だけでなく地上に通ずる廊下等までが対象です。

なお、同じ令和5年施行の改正で、令111条1項(窓その他の開口部を有しない居室の主要構造部)側にも同種の合理化が入っていますが、そちらの基準を定めるのは令和2年3月6日 国土交通省告示第249号で、本告示とは別のものです。208号=令120条(歩行距離)、249号=令111条(区画)と対応を押さえておくと混乱しません。

高層階およびメゾネット住戸における特殊な距離制限

15階以上の階の居室については、令120条3項が「前項本文の規定に該当するものを除き、第1項の表の数値から10を減じた数値を同項の表の数値とする」と定めています。本来50mなら40m、30mなら20mです。

この減算に床面積の条件は付いていません。「15階以上かつ床面積の合計が100㎡を超える場合」といった説明を見かけますが、令120条3項にその要件はなく、条文は階のみで切っています。

「前項本文の規定に該当するもの」=令120条2項本文の準不燃仕上げの要件を満たすものは、この−10mの対象から外れます。一方で令120条2項にはただし書きがあり、15階以上の階の居室には+10mの加算は適用されません。つまり15階以上では、準不燃仕上げにしても「表の数値+10m」にはならず、「表の数値そのまま」(=−10mを免れる)というのが条文の読み方です。

メゾネット住戸については令120条4項です。条文は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅(特定主要構造部を耐火構造としたものを含む)の住戸で、その階数が2又は3であり、かつ出入口が一の階のみにあるものの、当該出入口のある階以外の階について、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が40m以下である場合には、令120条1項を適用しない、というものです。

「住戸内階段は歩行距離に算入しない」という趣旨の規定ではありません。条件(準耐火構造の共同住宅/階数2か3/出入口が一の階のみ)を満たしたうえで、出入口のある階以外の階について、40m以下なら1項の適用を外すという構造です。条件を満たさない住戸に適用すると、そのまま不適合になります。

準不燃仕上げによる+10mの緩和と、その適用条件

令120条2項は、表の数値に10mを加算できる緩和を定めています。ただし「内装を準不燃にすれば一律+10m」ではありません。条文が要求している条件は4つあります。

  • 建築物が主要構造部が準耐火構造である建築物(特定主要構造部が耐火構造である建築物を含む)、又は主要構造部が不燃材料で造られている建築物であること
  • 対象は当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路。居室の内装だけでは足りず、避難経路側まで含めて仕上げる必要があります
  • 仕上げる範囲は壁(床面からの高さが1.2m以下の部分を除く)及び天井(天井のない場合は屋根)の室内に面する部分を準不燃材料とすること(回り縁・窓台等に類する部分を除く)
  • 15階以上の階の居室については適用しない(令120条2項ただし書き)

1つめの構造要件を落として+10mを取ると、そのまま過小設計になります。「準不燃で仕上げたから60m」と言えるのは、表で50mとなる居室((二)項・(三)項で建築物が準耐火構造等である場合)についてです。

算定の順序と、重複距離への波及

算定の順序は、①居室の種類と主要構造部から表の数値を決める → ②令120条2項の要件を満たすなら+10m(15階以上を除く) → ③15階以上なら、②に該当しない場合に−10m → ④その結果の数値が「前条に規定する歩行距離の数値」となり、重複距離の上限はその1/2、という流れになります。

条件歩行距離の数値重複区間の上限(1/2)
(三)項・準耐火構造等・緩和なし50m25m
(三)項・準耐火構造等・令120条2項の緩和適用60m30m
(一)項(採光無窓・百貨店等)・準耐火構造等・令120条2項の緩和適用40m20m
令120条1項の表・2項、令121条3項より。2行目・3行目は令120条2項の構造要件・範囲要件を満たす場合。

+10mは重複距離にも波及します。令121条3項の基準は「前条に規定する歩行距離の数値」であり、令120条2項が表の数値そのものを書き換える形になっているためです。50mが60mになれば、重複区間の上限も25mから30mになります。

一方で、この緩和は歩行距離の数値を動かすだけで、令121条1項の「二以上の直通階段を設けなければならない」という設置義務そのものには影響しません。距離が伸びても階段の要否は変わらないので、この2つを混同しないでください。

審査機関の指摘を未然に防ぐチェックリストとリスク回避術

歩行距離まわりで審査時に指摘が出やすいのは、数値そのものより測り方と適用条件です。条文は「居室の各部分から」直通階段の一に至る歩行距離と書いているので、起点は扉でも部屋の中心でもなく、その居室の中で階段から最も遠い点になります。以下は着手前と申請前の2回見ておくと差が出る項目です。

実務チェック項目 確認のポイントと論理的根拠
測定起点の妥当性 居室の最深部(扉ではない)を起点としているか
障害物の回避 柱、耐震壁などの構造体を最短経路で迂回しているか
重複距離の基準値 令121条3項の「前条に規定する歩行距離の数値」の1/2で見ているか(=令120条2項3項の+10/−10を反映した後の数値)
告示208号の適用 第一号〜第五号をすべて満たしているか(自動火災報知設備は建築物に、非常用照明は廊下等まで)

15階以上の階では、令120条3項の−10mが適用されるか、令120条2項本文に該当して免れるかを確認します。メゾネット住戸や採光無窓居室が重なる場合は、どの項・どの号の話なのかを1つずつ分けて確認してください。経路の取り方(柱の回避、廊下のどこを通す線とみなすか)は条文の規定ではなく運用なので、判断が割れそうな平面は事前相談で当該審査先の取扱いを確認しておくのが確実です。

このチェックは、平面が固まる前にやるほど安く済みます。申請直前に見つかった1mは階段を動かすことになりますが、コア位置を決める前に見つかった1mは線を引き直すだけです。

要点整理とよくある質問

項目要点根拠
歩行距離居室の種類と主要構造部で30m / 40m / 50m。準不燃仕上げの緩和で+10m、15階以上で−10m令120条1項の表・2項・3項
重複距離「前条に規定する歩行距離の数値」の1/2以下(合計ではない)。バルコニー等へ避難できる場合は適用外令121条3項
二以上の直通階段用途と床面積で要否が決まる。準耐火構造等では閾値が倍読み令121条1項・2項

無窓居室の歩行距離制限は、告示第208号でどう変わりましたか?

従来、採光無窓居室は令120条1項の表(一)項により構造にかかわらず30mでした。令和5年4月1日施行の改正で(一)項に括弧書きが入り、国土交通大臣が定める基準に適合するものが除かれることになりました。その基準が令和5年国土交通省告示第208号です。

告示の第一号から第五号をすべて満たすと、その居室は(一)項から外れ、用途に応じて(二)項または(三)項が適用されます。一般的な事務所等なら(三)項で、主要構造部が準耐火構造又は不燃材料なら50m、その他の場合は40mです。告示が「50m」という数値を定めているのではなく、また告示の要件に特定防火設備は含まれていません。第三号イが求めているのは法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で、令第112条第19項第2号の構造(遮煙性能)を有するものです。遮炎性能1時間の特定防火設備とは別物です。

実務でつまずきやすいのは設備側です。第五号の自動火災報知設備は令第110条の5の基準に従って建築物に設けられている必要があり、第一号ロの非常用照明は居室および地上に通ずる廊下等までが対象です。意匠側だけで完結しません。

内装制限による10mの緩和を適用すると、重複距離の上限も変わりますか?

変わります。令121条3項が基準にしているのは「前条に規定する歩行距離の数値」で、令120条2項は「前項の表の数値に十を加えた数値を同項の表の数値とする」と表の値そのものを書き換えているためです。したがって50mが60mになれば、重複区間の上限は25mから30mになります。

変わらないのは「1/2」という比率と、令121条1項の階段設置義務です。距離が伸びても必要な階段の数は減りません。

メゾネット住戸や高層階で注意すべき点は?

15階以上の階の居室は、令120条3項により、令120条2項本文に該当するものを除き表の数値から10mを減算します。床面積の要件はありません。また令120条2項ただし書きにより、15階以上の階の居室には+10mの加算は適用されません。つまり2項本文の要件を満たしても「表の数値+10m」にはならず、「表の数値そのまま」(=−10mを免れる)になります。

メゾネット住戸は令120条4項です。「住戸内階段を歩行距離に算入しない」という規定ではありません。条文は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅(特定主要構造部を耐火構造としたものを含む)の住戸で、その階数が2又は3であり、かつ出入口が一の階のみにあるもの当該出入口のある階以外の階について、歩行距離が40m以下である場合に令120条1項を適用しない、というものです。この40mは固定値で、構造によって変動しません(準耐火構造等であることは適用の前提条件です)。条件を満たさない住戸に適用すると、そのまま不適合になります。

次に確認しておくべきこと

歩行距離と重複距離が固まったら、同じ平面で連鎖して効いてくるのは次の項目です。ここまでセットで確認しておくと、同じ図面で二度指摘を受けずに済みます。

  • その居室が本当に採光無窓居室か(令116条の2第1項第1号)。採光に有効な部分の面積が床面積の1/20以上あるかで判定が変わり、ここが変わると表(一)項か(三)項かが変わります。告示208号の検討に入る前に、まずこの判定です
  • 避難施設等の規定がそもそも適用される建築物か(令117条)。この節の規定は、法別表第1(い)欄(一)〜(四)項の特殊建築物、階数3以上、採光無窓居室を有する階、延べ面積1,000㎡超に限って適用されます。開口部のない耐火構造の床・壁で区画された部分は別の建築物とみなされます(同条2項)
  • 二以上の直通階段が必要な階かどうか(令121条1項)。重複距離の1/2ルールは、そもそも二以上の直通階段を設ける場合の規定です。令121条2項により、準耐火構造又は不燃材料の建築物では床面積の閾値が倍読みになります
  • 避難上有効なバルコニー等の有無。令121条3項ただし書きにより、重複区間を経由せずに避難上有効なバルコニー・屋外通路等へ避難できる場合は1/2ルールが適用されません。逃げ道として先に検討する価値があります
  • 告示208号を使うなら設備側の手当て。自動火災報知設備(第五号)は建築物に、非常用照明(第一号ロ)は居室と地上に通ずる廊下等まで必要です。意匠だけで完結しないので、設備担当と早めに握っておく項目です
  • 令111条側の区画の合理化(令和2年国土交通省告示第249号)。歩行距離(208号)とは別の告示ですが、適用条件が近いため、無窓居室を扱うなら両方の可否を同時に見ておくと手戻りが減ります

まとめ

歩行距離と重複距離は、条文の数値そのものよりどの項・どの条件が効くのかで間違えます。居室の種類((一)(二)(三)のどれか)、主要構造部の構造、準不燃仕上げの有無、階が15階以上か——この4つが決まらないと数値は決まりません。

そして重複距離は、実測値でも2経路の合計でもなく、令120条で定まった規制値の1/2です。ここを取り違えると、緩和を適用した平面ほど誤差が大きくなります。

項目数値・要件根拠条文
歩行距離(一)30/30・(二)50/30・(三)50/40(m)令120条1項の表
準不燃仕上げの加算+10m(準耐火構造等の建築物・廊下等まで・15階以上を除く)令120条2項
15階以上の減算−10m(2項本文該当を除く・床面積要件なし)令120条3項
重複距離令120条で定まる数値の1/2以下(バルコニー等へ避難できる場合は適用外)令121条3項
採光無窓の合理化告示第208号の第一号〜第五号すべてに適合で表(一)項から除外令5国交告208

令120条2項の+10mは、建築物の構造要件と、居室だけでなく地上に通ずる主たる廊下・階段まで準不燃で仕上げるという範囲要件がそろって初めて使えます。構造要件を落としたまま+10mを取ると、そのまま過小設計になります。

数値と適用条件を初期段階で確定させておくことが、後工程での手戻りを構造的に減らします。

令和5年告示第208号については、「特定防火設備を付ければ50mになる」という説明が流通していますが、告示にその要件はありません。第一号から第五号までをすべて満たすことが条件で、第三号イが求めるのは遮煙性能を有する防火設備です。数値を主張するときは、その数値がどの条・どの項・どの号から来たかを一緒に言えるかどうかを基準にしてください。

本記事の数値は e-Gov 法令検索の建築基準法施行令の条文と、令和5年国土交通省告示第208号の告示本文を直接参照して記載しています。条文は改正されます。設計・申請で使う際は、着手時点の最新条文をご自身でも確認してください。

避難規定は、資格試験でも実務でも「条文の適用条件を読めるか」がそのまま問われる分野です。ここを条文で押さえておくと、他の避難施設等の規定(令121条の2以降の階段・排煙・非常用照明)も同じ読み方で辿れるようになります。

【再起の伴走】一級・二級建築士の申し込みと試験日からの逆転戦略
一級・二級建築士の申し込みや試験日を検索しながら、多忙を理由に挑戦を先延ばしにし続け、資格のない自分を「未経験同然」と見なされる市場価値の低さに絶望してはいませんか。個別の事情を深く汲み取るジョブリー建設の伴走支援を戦略的に使い倒せば、未経験を強みに変え、疲弊した精神を癒やしながら市場価値を再構築できます。圧倒的な市場価値を再構築し、現場を主導する威厳とプロとしての真の優越感をその手にしてください。

実務資料

条文を読んだあと、申請実務の全体像と照合する

『建築申請memo 2026』は、建築確認申請に関わる制約を図表で整理した実務書です。廊下・出口・避難通路等も収録されているため、令120条・令121条だけで判断を閉じず、周辺規定とのつながりを見直す用途に向きます。

  • 2026年版で、2025年4月施行の法改正内容を反映
  • 建築基準法だけでなく、確認申請に関係する他法令も横断
  • 法令チェック項目と審査項目を対応させた構成

本書は法令そのものではありません。設計・申請では、e-Gov等で着手時点の条文を確認し、判断が分かれる箇所は特定行政庁または指定確認検査機関へ照会してください。