竪穴区画とは何か。対象・仕様・緩和を条文から整理
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結論 — 竪穴区画は「主要構造部が準耐火構造以上」かつ「地階・3階以上に居室」がある建築物の吹抜け・階段・EV昇降路等に必要
竪穴区画(建築基準法施行令第112条第11項)は、主要構造部を準耐火構造(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む)とした建築物、または第136条の2第1号ロ・第2号ロの基準に適合する建築物であって、地階または3階以上の階に居室があるものの「竪穴部分」(長屋・共同住宅で階数2以上の住戸、吹抜け、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分等)を、それ以外の部分と準耐火構造の床・壁または防火設備(20分)で区画する規定です。
不要になる主なケース — ①避難階からその直上階または直下階のみに通ずる吹抜け・階段等で内装を不燃材料仕上げ等にしたもの、②階数3以下・延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅、または長屋・共同住宅の住戸(いずれも吹抜き・階段・昇降機の昇降路等の部分に限り、ダクトスペースの部分は対象外)で階数3以下・床面積合計200㎡以内のもの(令112条第11項ただし書き第1号・第2号)。木造3階建て住宅でも「準耐火構造」であれば本則の対象になり得ますが、200㎡以内の住宅・住戸は上記②の除外に該当することが多くなります。個別の面積・階数・構造は図面で確認してください。
病院・診療所(患者収容施設あり)・児童福祉施設等が3階にある階数3・延べ面積200㎡未満の建築物には第12項、それ以外の別表第一(い)欄(二)項用途(ホテル・共同住宅・寄宿舎等)には第13項が、それぞれ11項とは別の区画基準を定めています。
本文の基準日と11月1日の改正:本文は2026年10月19日の施行中条文を基にしています。9月16日公布の令和8年政令第284号は、11月1日から令112条1・4・5・11項(面積区画・竪穴区画)に大臣指定の除外規定を追加します。詳細を定める関係告示は10月19日時点では案です。11月1日以後の設計・申請では、改正後条文と公布された告示の適用条件を確認してください。改正概要・施行日/関係告示案。
竪穴区画は、面積区画(令112条1項・4項・5項)、異種用途区画(同条18項)、防煙区画(令126条の3)、避難階段の区画(令123条)と混同されやすい規定です。この記事では、竪穴区画の対象・仕様・緩和を令112条の該当項ごとに整理し、隣接する区画制度との違いを分けます。
法令確認日:2026年9月19日。e-Govで現行として提供される建築基準法・施行令(法令ID 325AC0000000201・325CO0000000338)と、国土交通省の告示を確認しています。個別の設計・確認申請では、適用時点の法令と確認図書、指定確認検査機関・特定行政庁への照会結果を優先してください。
竪穴区画とは何か(令112条第11項)
竪穴部分に該当するもの
令112条第11項は「竪穴部分」を次のように定義しています。
- 長屋または共同住宅の住戸で、その階数が2以上であるもの
- 吹抜きとなっている部分
- 階段の部分(当該部分からのみ人が出入りできる便所・公衆電話所その他これらに類するものを含む)
- 昇降機の昇降路の部分
- ダクトスペースの部分
- その他これらに類する部分
対象となる建築物は「主要構造部を準耐火構造とした建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む)」または「令136条の2第1号ロ・第2号ロに掲げる基準に適合する建築物」であって、地階または3階以上の階に居室を有するものです。この竪穴部分を、それ以外の部分(直接外気に開放されている廊下・バルコニー等を除く)と、準耐火構造の床・壁または法2条9号の2ロに規定する防火設備(20分間の遮炎性能。令109条の2)で区画しなければなりません。
竪穴区画が不要になる2つのただし書き
令112条第11項ただし書きは、次の竪穴部分を区画義務から除外しています。
| 号 | 除外の対象 | 条件 |
|---|---|---|
| 第1号 | 避難階からその直上階または直下階のみに通ずる吹抜き・階段等 | 国土交通大臣が定める基準に従い、壁・天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料とし、下地も不燃材料とすること等 |
| 第2号 | 一戸建ての住宅、または長屋・共同住宅の住戸における吹抜き・階段・昇降機の昇降路等の部分(ダクトスペースの部分は列挙されていません) | 階数3以下かつ延べ面積(住戸は床面積の合計)200㎡以内 |
「3階建て住宅なら竪穴区画は不要」という理解は正確ではありません。第11項本文の対象はあくまで「主要構造部を準耐火構造とした建築物」で、地階または3階以上に居室があるものです。木造3階建て住宅がこの本文の対象に含まれる場合でも、ただし書き第2号の「階数3以下・延べ面積200㎡以内」に該当すれば区画が不要になる、という順序で判断します。200㎡を超える住宅や、共同住宅の共用部分など第2号の対象外となるケースでは、区画が必要です。また、ただし書き第2号が除外するのは吹抜き・階段・昇降機の昇降路等の部分に限られ、ダクトスペースの部分は列挙されていません。ダクトスペースがある住宅・住戸では、その部分の区画要否を別途確認してください。
3階建て特定用途建築物の追加規定(令112条第12項・第13項)
病院・診療所・児童福祉施設等(第12項)
3階を病院・診療所(患者の収容施設があるものに限る)または児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものに限る)の用途に供する建築物のうち、階数が3で延べ面積が200㎡未満のもの(第11項の対象建築物を除く)は、竪穴部分をそれ以外の部分と間仕切壁または防火設備(20分)で区画しなければなりません。ただし、居室・倉庫等にスプリンクラー設備等を設けた建築物では、防火設備に代えて十分間防火設備(令和2年国土交通省告示第198号「十分間防火設備の構造方法を定める件」が定める構造方法)で区画できます。
ホテル・共同住宅等(第13項)
3階を別表第一(い)欄(二)項の用途(病院・診療所・児童福祉施設等を除く。ホテル・共同住宅・寄宿舎・下宿等が該当)に供する建築物のうち、階数が3で延べ面積が200㎡未満のもの(第11項の対象建築物を除く)は、竪穴部分をそれ以外の部分と間仕切壁または戸(ふすま・障子等を除く)で区画しなければなりません。第12項より要求される仕様が軽い点が異なります。
第12項・第13項が適用されない建築物(第15項)
令112条第15項は、「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物」として、壁・天井の仕上げ材料、消火設備・排煙設備の設置状況・構造を考慮して国土交通大臣が定めるものの竪穴部分には、第12項・第13項を適用しないと定めています。該当するかどうかは、大臣が定める基準の原文を個別に確認します。
混同しやすい隣の区画制度
面積区画(令112条第1項・第4項・第5項)との違い
面積区画は、竪穴区画とは別の制度です。準耐火建築物等(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む)で延べ面積1,500㎡超のものは床面積の合計1,500㎡以内ごとに(第1項)、性能規定による代替ルートで準耐火建築物等とされた建築物で延べ面積500㎡超または1,000㎡超のものはそれぞれ500㎡・1,000㎡以内ごとに(第4項・第5項)、区画を求めています。竪穴区画は「竪穴部分」という建築物の部分の種類で区画対象を決めるのに対し、面積区画は建築物全体の延べ面積・床面積で区画単位を決める点が異なります。
異種用途区画(令112条第18項)との違い
令112条第18項は、建築物の一部が法27条第1項各号・第2項各号・第3項各号のいずれかに該当する場合、その部分とその他の部分を1時間準耐火基準の準耐火構造の床・壁または特定防火設備で区画すると定めています。用途の異なる部分同士を区画する制度で、竪穴部分の上下方向の連続を区画する竪穴区画とは対象が異なります。
防煙区画(令126条の3)・避難階段の区画(令123条)との違い
防煙区画(令126条の3)は排煙設備の構造基準で、防煙壁により床面積500㎡以内ごとに区画するものです。避難階段の区画(令123条)は、階段室そのものの構造要件(耐火構造の壁、防火設備の建具等)を定める規定です。いずれも「区画」という言葉は共通しますが、根拠条文・区画の目的(排煙/避難経路の独立性)が竪穴区画とは異なるため、条文を混同せずに個別に確認します。
防火設備の構造要件と給水管等の貫通処理
防火設備の閉鎖・作動要件(第19項)
竪穴区画に用いる防火設備・十分間防火設備・戸は、令112条第19項第2号が定める要件(常時閉鎖または随時閉鎖・作動ができること、閉鎖時の周囲の安全確保、避難経路上のものは閉鎖後も避難上支障がないこと、避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有すること、常時閉鎖状態にないものは煙感知時に自動閉鎖すること)を満たす構造方法・認定を受けたものとする必要があります。同項第1号が定める面積区画(第1項本文・第4項・第5項)用の特定防火設備は、煙感知に加えて温度急昇時も自動閉鎖の対象になりますが、竪穴区画の防火設備は煙感知のみが自動閉鎖のトリガーです。
給水管等の貫通処理(第20項)
竪穴区画を給水管・配電管等が貫通する場合は、令112条第20項により、管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければなりません。配管の構造そのもの(令129条の2の4等)と、区画を貫通する際の隙間処理は別の確認事項です。詳しい照合は下記の防火区画貫通処理の記事を参照してください。
竪穴区画に関するよくある質問
3階建ての住宅なら竪穴区画は不要ですか?
階数3以下かつ延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅、または長屋・共同住宅の住戸で階数3以下・床面積合計200㎡以内のものは、令112条第11項ただし書き第2号により、吹抜き・階段・昇降機の昇降路等の部分の竪穴区画が不要です。ただし、これは「3階建て住宅だから」ではなく「200㎡以内」という面積条件によるもので、200㎡を超える住宅や共同住宅の共用部分は対象外になりません。また、ただし書き第2号はダクトスペースの部分を除外対象として列挙していないため、ダクトスペースがある場合は別途区画要否を確認してください。
竪穴区画と面積区画はどちらも必要になりますか?
竪穴区画(令112条11項〜15項)と面積区画(同条1項・4項・5項)は別の要件で、該当条件を満たせば両方とも適用されます。建築物の規模・構造によっては同じ建築物に複数の区画義務が同時に生じるため、それぞれの根拠条文を分けて確認します。
スプリンクラーを設置すれば竪穴区画の防火設備は簡略化できますか?
令112条第12項が対象とする建築物(3階が病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積200㎡未満)に限り、居室・倉庫等へのスプリンクラー設備等の設置により、通常の防火設備(20分)に代えて十分間防火設備(令和2年国交省告示第198号)を使うことができます。第11項・第13項が対象とする建築物には、この代替規定はありません。
まとめ
竪穴区画は、主要構造部が準耐火構造以上で地階または3階以上に居室がある建築物の吹抜け・階段・EV昇降路等(竪穴部分)を対象とする区画で、令112条第11項が本則、第12項・第13項が3階建て特定用途建築物への追加規定です。面積区画・異種用途区画・防煙区画・避難階段の区画とは根拠条文も区画の目的も異なります。
| 項目 | 基準 | 一次根拠 |
|---|---|---|
| 竪穴区画の本則 | 準耐火構造以上・地階/3階以上に居室がある建築物の竪穴部分を区画 | 令112条第11項 |
| 不要になる場合 | 避難階直上/直下のみの吹抜け等(不燃仕上げ)、または住宅・住戸の吹抜き・階段・昇降機の昇降路等で階数3以下・200㎡以内 | 令112条第11項ただし書き |
| 病院等3階建ての追加規定 | 間仕切壁または防火設備(スプリンクラー設置時は十分間防火設備) | 令112条第12項・告示198号 |
| ホテル・共同住宅等3階建て | 間仕切壁または戸 | 令112条第13項 |
| 給水管等の貫通処理 | 管と区画の隙間を不燃材料で埋める | 令112条第20項 |
同じ現場では、防火区画の配管貫通処理、居室の定義、寄宿舎・共同住宅の用途判定、歩行距離・重複距離も合わせて確認すると、避難安全に関わる隣接論点を見落としにくくなります。
出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号) 第2条・第27条 — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号) 第112条第1項・第4項・第5項・第11項〜第15項・第18項〜第20項、第123条、第126条の3、第136条の2 — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 十分間防火設備の構造方法を定める件(令和2年2月27日国土交通省告示第198号)