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防火ダンパー(FD)はどこに必要?設置条件と72・120・280℃の出典

結論 — FDは、換気・暖房・冷房の風道が防火区画を貫通するときに、区画の種別と例外条件を確かめて設けます。72・120・280℃は、どのダンパーにも共通する法令の一律値ではありません。

建築基準法施行令112条21項は、風道の貫通部または近接部に、区画に応じた防火設備を設けること、火災時に閉鎖すること、閉鎖時に遮煙性能を持つことを定めています。作動温度の選定では、適用法令・告示、設備系統、感知方式、認定や製品仕様を分けて読みます。

厨房排気の「120℃」には、業界団体が示す温度ヒューズの系統別目安と、東京消防庁の上引き排気ダクト向け温度センサー設定値があります。これは部品も適用範囲も異なる情報です。

法令確認日:2026年11月1日。施行令は同日施行の改正を反映したe-Gov現行条文で確認しています。個別の設計・改修では、区画種別、確認図書、適用する告示・認定、所管行政庁と消防機関の取扱いを照合してください。

防火ダンパーはどこに必要か。配管の貫通処理とは別に見る

建築基準法施行令112条21項が対象にするのは、換気・暖房・冷房設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合です。大臣が防火上支障ないと認めて指定する場合を除き、貫通する部分または近接部分に、区画の種別に応じた防火設備を設けます。設ける設備は、同項の性能要件を満たす大臣指定の構造方法か、大臣認定を受けたものです。

同項は、煙の発生または急激な温度上昇時に自動閉鎖すること、閉鎖時に防火上支障のない遮煙性能を持つことを求めます。「防火ダンパー」という名前だけで選ばず、どの区画を貫通するか、必要な防火設備の区分、採用する告示仕様・認定、感知と連動の方式を確認します。告示2565号はダンパーの構造方法と漏煙試験を、告示1376号は取付けや区画近傍の風道、点検口・検査口を定めています。

給水管・配電管などの管は令112条20項が対象で、区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋める規定です。ダクトの設備要件(21項)とは別です。また、令129条の2の5第2項第5号の風道材料は「空気を汚染するおそれのない材料」とする規定で、すべての換気ダクトを不燃材料にする規定ではありません。排煙機を設ける排煙設備では、煙に接する部分に不燃材料を求める規定が令126条の3第1項第2号にあります。不燃ダクトにしただけで、112条21項の設備要件がなくなるとは読めません。

72・120・280℃はどの温度か。出典と適用範囲を分ける

表示される温度確認できた出典読み方
72℃日本防排煙工業会のFAQは、一般空調・換気系統用の温度ヒューズの公称作動温度として説明。個別例として大竜産業のFD-2-7K/DH-2取扱説明書にも公称72℃の記載がある業界団体の系統別説明と特定製品の仕様。令112条21項や告示2565号が全設備に72℃を義務付けているわけではない
120℃日本防排煙工業会のFAQは厨房排気系統用の温度ヒューズとして説明。別に、消防庁通知279号添付の東京消防庁基準は、火気器具上部の上引き排気ダクトで温度センサーの設定を「概ね120℃」とすることが望ましいとする前者はヒューズの系統別説明、後者は対象を限ったセンサー設定の推奨。後者は全国一律の法令値でも、ヒューズ公称温度の指定でもない
280℃消防法施行規則30条1項3号ホ(ハ)は、排煙設備のうち延焼防止に必要な箇所に設けるダンパーについて、自動閉鎖装置付きの場合の閉鎖温度を280℃以上とする。国交省の令和7年公共建築工事標準仕様書1.15.7(3)は、排煙ダクトに付ける防火ダンパーのヒューズ作動温度を280℃とする消防法の適用条件と官庁営繕の工事仕様。それぞれの範囲を超えて、一般換気FD全般の温度やヒューズ公称値と同一視しない

「よく見る数字」と法令上の一律値は別です。告示2563号の感知器条件やヒューズの試験温度は、温度ヒューズの公称作動温度とは異なります。現行の告示2565号本文にも、72・120・280℃を全用途共通とする条文はありません。告示仕様・認定・設計図書と採用製品の仕様を合わせてください。

なお、日本防排煙工業会は各社のヒューズに互換性がない場合があると案内しています。交換時に温度の数字だけを合わせず、ダンパーの型式とメーカーが指定する部品を確認してください。JIS A 1314の公開プレビューでは温度区分の表を確認できなかったため、同規格を72℃の根拠としては用いていません。

FD・SFD・PFD・MD・SMDは同じ意味ではない

略号は法令上の全国共通用語とは限りません。令和7年版「公共建築設備工事標準図」の記号表では、次の名称を使います。

記号標準図の名称・確認事項
FD防火ダンパー。温度ヒューズ連動で自動閉鎖(標準仕様書1.15.7)
SFD防火防煙ダンパー。FDと防煙ダンパーの仕様を適用(1.15.9)
SMD / SD排煙 / 防煙ダンパー。SDは煙感知器連動で閉鎖し、電気式遠隔復帰(1.15.8)
HFD排煙ダクト接続の防火ダンパー。仕様は機器表で確認
MD / PDモーター / ピストン式。PDは消火ガス連動で閉鎖し遠隔復帰(1.15.10)
PFD標準図の共通記号にない。PFDL-R型式の例は温度ヒューズ連動・ガス圧式遠隔復帰。一般定義ではない

とくに排煙(煙を排出する設備)と防煙(煙の流れを抑える機能)は目的が異なります。PFDも、型式一覧に載る名称だけで全メーカー共通の性能・用途を推定できません。略号だけで選定せず、凡例、機器表、系統図、型式・認定番号を一緒に読みます。

点検口と定期検査。法令・業界推奨・現場例を分ける

告示1376号第三は、保守点検が容易な一辺45cm以上の点検口と、防火設備の開閉・作動を確認できる検査口を求めています。単に天井点検口が近くにあれば足りるのではなく、そこから設備を確認・操作できる配置かを設計図と現場で照合します。

建築基準法12条3項の定期検査・報告は、政令で定める特定建築設備等や特定行政庁が指定する設備が対象です。国交省告示285号の換気設備の検査項目には、FDの設置・取付け・作動・劣化、点検口と検査口、温度ヒューズ、区画貫通措置、連動型の感知器・連動状況が並びます。ヒューズの判定は「適正な溶解温度」で、全設備共通の数値は示していません。対象建築物や報告時期は、法令と自治体の定期報告制度で確認します。

日本防排煙工業会は機能点検を6か月に1回以上と推奨しています。これは同会の推奨で、12条の報告対象や法定頻度そのものではありません。

消防法の排煙設備には消防法施行規則30条の別条件があります。建築物衛生法と厚生労働省告示119号は空調・機械換気設備の衛生的な維持管理や清掃を扱い、防火ダンパーの火災時作動温度を定めるものではありません。建築基準法の防火区画、消防法の排煙、建築物衛生法の衛生管理を一つの検査基準として混ぜないでください。

図面を確認するときの順番

  1. 壁・床の区画種別と根拠図書を特定する。
  2. 風道か管かを分け、令112条21項の対象と適用除外を確認する。
  3. 区画に必要な防火設備、告示仕様または認定、感知・連動方式を確かめる。
  4. 設備系統とヒューズ・センサーの種類を特定し、温度の数字がどの出典・部品の値か確認する。
  5. 告示1376号の固定、近接風道、45cm点検口・作動確認口を図面と現物に照合する。
  6. 設備記号だけで判断せず、凡例・機器表・型式・認定・自治体の条例や指導を確認する。

同じ現場では、配管が区画を通る場合の令112条20項と施工条件を防火区画の配管貫通処理で、火気使用室の換気量は火気使用室の換気計算で、設備記号の読み方はベントキャップの記事でも確認できます。竪穴区画の範囲は竪穴区画の記事を参照してください。

出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項:e-Gov法令検索
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第20・21項、第126条の3、第129条の2の5:e-Gov現行条文(2026年11月1日確認)
  • 昭和48年建設省告示第2565号「防火区画を貫通する風道に設ける防火設備の構造方法を定める件」:国土交通省掲載PDF/改正履歴:日本法令索引、平成30年告示1098号・令和元年告示200号・令和2年告示508号・令和6年告示221号の新旧対照表
  • 昭和48年建設省告示第2563号「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」:国土交通省掲載の現行本文。令和2年告示第508号の改正新旧対照表:国土交通省PDF
  • 平成12年建設省告示第1376号「防火区画を貫通する風道に防火設備を設ける方法を定める件」:国土交通省掲載PDF。特定防火設備の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1369号):国土交通省掲載資料
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第30条:e-Gov法令検索
  • 国交省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」1.15.7(3)、修補版(2025年11月5日):公式掲載ページ。同「公共建築設備工事標準図(機械設備工事編)令和7年版」:公式掲載ページ
  • 消防庁通知・消防予第279号(2026年7月3日)別添2「火気器具上部に設置される排気ダクト等に係る技術基準」:消防庁PDF
  • 日本防排煙工業会「Q&A集」1-14、1-15、1-17、型式承認一覧:FAQ/型式一覧
  • 大竜産業「FD-2-7K/DH-2 取扱説明書」:メーカー資料(特定製品例)
  • 平成20年国土交通省告示第285号「建築設備(昇降機を除く。)の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件」:国土交通省制度ページ。改正:令和6年告示第273号(2024年4月1日施行)、令和6年告示第974号(2025年7月1日施行)、令和7年告示第53号(2025年7月1日施行):273号/974号/53号
  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律:e-Gov法令検索。平成15年厚生労働省告示第119号「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」:厚生労働省掲載ページ

確認日:2026年11月1日。略号・温度・点検頻度は、法令上の一律要件、業界団体の案内、地域の技術基準、契約仕様、製品ごとの値を区別して記載しています。