排水トラップの封水深は何cm?5〜10cmと二重トラップ・破封の原因
結論 — 排水トラップの深さは原則5〜10cm。二重トラップは避け、通気で圧力変化から封水を守ります
建築基準法施行令と昭和50年建設省告示第1597号では、排水トラップの有効な深さを5cm以上10cm以下としています。阻集器を兼ねるトラップは5cm以上です。告示は二重トラップとならない設置も求めています。
封水が減る原因には、排水による自己サイホン・誘導サイホン・跳ね出し、毛髪などによる毛管現象、長期不使用時の蒸発があります。通気管は、排水管内の圧力差で封水が破られないように設けます。
排水トラップは、器具の排水口と排水管の途中に水を残し、排水管内の臭気や衛生害虫が室内へ移動するのを防ぐ設備です。水がたまった部分を「封水」と呼びます。封水は多いほどよいわけではなく、法令の深さと排水設備の条件に合わせて設けます。
法令の5〜10cmは「排水トラップの深さ」
現行の建築基準法施行令第129条の2の4第3項は、排水のための配管設備にトラップや通気管等を設けるなど、衛生上必要な措置を求めています。具体的な構造方法は、昭和50年建設省告示第1597号「建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件」に定められています。
告示第二第三号は、排水トラップを「排水管内の臭気、衛生害虫等の移動を有効に防止するための配管設備」と定義し、次の条件を示しています。
- 雨水排水管(雨水排水立て管を除く)を汚水の排水設備につなぐ場合は、その雨水排水管にトラップを設ける。
- 二重トラップにならないように設ける。
- 汚水中の汚物などが付着・沈殿しない措置を講じる。ただし、阻集器を兼ねるトラップにはこの項目を適用しない。
- トラップの有効な深さは5cm以上10cm以下。阻集器を兼ねるトラップは5cm以上。
- 容易に掃除できる措置を講じる。
「封水深50mm以上」だけを抜き出すと上限が落ちます。通常のトラップは5〜10cmです。油脂などを分離する阻集器の機能も兼ねるトラップは、告示の同じ号で5cm以上とされ、10cm以下という上限はこの文では置かれていません。阻集器自体も、排水設備の機能を妨げる油脂・ガソリン・土砂等を分離でき、掃除しやすい構造とする必要があります(告示第二第四号)。
告示第三の適用特例は、法別表第一(い)欄の用途以外で、階数2以下かつ延べ面積500㎡以下の建築物について、一部の規定を適用除外にしています。除外対象には、告示第二第三号イ(雨水排水管を汚水系統につなぐ場合のトラップ設置)と第四号(阻集器)が含まれます。二重トラップ、トラップ深さ、清掃に関する第三号ロ〜ホまでを一律に除く規定ではありません。個別建物で適用範囲を判定するときは、用途や面積を含めて告示第三を確認してください。
二重トラップは排水と空気の流れを妨げる
二重トラップ(ダブルトラップ)は、一つの排水経路に水封をつくる部分が直列に二つ以上ある状態です。器具にトラップが付いているのに、排水先のトラップますにも封水がある場合などに起きます。町田市の排水設備指針は、器具トラップを備えた排水管を小口径トラップますへ接続しないよう具体例を示しています。
排水時には、水だけでなく管内の空気も入れ替わります。キッチン・バス工業会の相談資料では、二重トラップで空気の入れ替わりが滞ると、流れが悪くなったり「ゴボゴボ」と音がしたりする場合があると説明しています。臭いを防ぐために水封を重ねると、排水がかえって不安定になることがあります。配管のたわみで水がたまるケースも含め、図面と実物の経路で水封がいくつあるかを確認します。
告示第二第五号の通気管は、排水管内の圧力と大気圧との差でトラップが破封しないよう有効に設け、汚水の流入で通気が妨げられないようにし、原則として外気へ衛生上有効に開放します。これは圧力変化への対策です。長期不使用による蒸発や、髪・糸による毛管現象を通気管だけで防ぐものではなく、二重トラップを許容する意味でもありません。
封水が破られる主な5つの原因
町田市の排水設備指針は、封水の破壊を次の原因に分けています。いずれも現象の説明で、症状だけから原因を断定するものではありません。
- 自己サイホン作用:器具から一気に排水すると、排水の流れがトラップ内の水を引き込みます。Sトラップで起きやすい現象として同指針が説明しています。
- 誘導サイホン作用:立て管を大量の排水が流れたとき、接続部付近の圧力が下がり、器具トラップの封水が吸い出されることがあります。
- 跳ね出し作用:立て管内の圧力が急に上がり、封水が押し出される現象です。
- 毛管現象:髪や布糸がトラップのあふれ部に引っ掛かって垂れ下がると、毛細管現象で封水が引かれることがあります。
- 蒸発:器具を長く使わない間に水分が蒸発し、封水が減ります。
告示第二第五号が直接扱うのは、排水管内と大気圧の差による破封です。自己サイホン・誘導サイホン・跳ね出しは排水時の圧力変化に関係します。毛管現象や蒸発は別の原因なので、同じ対策で解決するとは限りません。症状が繰り返す場合は、トラップの数・配管の勾配やたわみ・通気経路を確認し、設計者や排水設備工事業者へ相談してください。
S・P・わんトラップは形と設置位置の違い
トラップには器具に組み込まれた器具トラップと、配管途中に設ける管トラップがあります。SトラップやPトラップは、曲げた管に封水をつくる方式です。器具の排水方向や配管経路に合わせて形が異なります。浴室や床排水には、わん(ベル)状の部品で封水をつくる「わんトラップ」もあります。町田市指針は、わん状の部品を外すとトラップ機能が失われる点にも触れています。
名称だけで封水深や二重トラップの有無は判断できません。器具側にトラップが内蔵されているか、トラップますがあるか、配管の途中で水がたまっていないかを一つの経路として見ます。製品ごとの寸法や掃除方法は、設置品の仕様書で確かめてください。
宅地内の排水設備は自治体の基準も確認する
下水道法第10条第3項は、排水設備の設置・構造について、政令の技術基準に従うことを定めています。下水道法施行令第8条第1号では、排水設備を公共下水道管理者である地方公共団体の条例に従って接続するよう求めています。建築基準法令・告示のほか、排水設備を接続する自治体の条例、規則、技術指針も確認してください。
たとえば町田市の「排水設備指針2012年度改定版」は、市内の排水設備について二重トラップを避ける条件や封水深を示しています。これは町田市の指針例で、他の自治体の基準として使えるものではありません。実際の工事では、所在地の下水道管理者が公開する最新の基準と申請要領を参照します。
告示番号の読み違いにも注意します。告示第二の「二」は排水槽、「六」は排水再利用配管設備です。告示全文PDFの前文には制定当時の施行令第129条の2の5が記載されていますが、現行の排水設備規定は施行令第129条の2の4第3項です。現行条文と告示の本文を並べて確認してください。
同じ現場で隣に確認する項目
出典・確認日
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の2の4第3項:e-Gov法令検索(現行条文)
- 昭和50年建設省告示第1597号「建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件」第二の二〜六、第三:国土交通省掲載・告示全文PDF
- 同告示の改正履歴:国立国会図書館 日本法令索引(最終改正:平成22年国土交通省告示第243号)
- 下水道法(昭和33年法律第79号)第10条第3項、下水道法施行令(昭和34年政令第147号)第8条:下水道法 / 下水道法施行令
- 町田市「排水設備に関する冊子・パンフレット」:町田市公式ページ(排水設備指針2012年度改定版、地域限定の例)
- キッチン・バス工業会「なんでも相談Q&A シンク排水の流れが悪く、ゴボゴボと音がするのはなぜ?」:公開資料(2020年)
確認日:2026年10月。封水深の該当条文、阻集器を兼ねる条件、建物と自治体の適用範囲を確認してから設計・施工の条件を確定してください。